新国立決定「五重塔」A案が「御柱」B案に勝つ「実現性高い」

[ 2015年12月23日 05:30 ]

新国立競技場の新たな完成イメージの前で握手する建築家の隈研吾氏(右)とJSCの大東和美理事長

 2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新たな国立競技場の建設計画を担う設計・施工業者の選定で、政府は22日、応募2案から大成建設などと建築家の隈研吾氏(61)が手掛けたA案の採用を決めた。建築家の伊東豊雄氏(74)らによるB案と明暗を分けたのは工期の実現性。両者ともに19年11月末と定めたが、A案を「実現可能性が高い」と判断した。基本設計などを経て16年12月から本体工事に取りかかる。

 巨額工費で批判されたザハ案の白紙撤回から5カ月。世論を巻き込んだA案「五重塔」とB案「御柱」の一騎打ちは、「五重塔」に軍配が上がった。

 政府がA案を了承したことを受け、日本スポーツ振興センター(JSC)は都内で会見。2案を採点した技術提案等審査委員会の村上周三委員長は「工期やコストについて約束を守ってくれるかが最大の関心事だった。A案は実現可能性を脅かす要因がなかった」と説明。対してB案は「準備工事や(本体工事での)新工法が無理なく認可されるかが不安要因だった。もしかしたら遅れる可能性があると危惧が出ていた」と指摘した。2層のスタンドの間に取り入れた「中間層免震」など「技術的にチャレンジングな部分があった」(JSC幹部)という。

 審査委員7人が19日に実施した採点では、980点満点でA案610点、B案602点とわずか8点差だった。「日本らしさに配慮した計画」や「構造計画」などを評価する5項目の「施設計画」ではB案が24点上回った。この項目でA案がB案を上回ったのは「環境計画」だけだった。

 ただ、工期の実現性を審査する「工期短縮」でA案は177点でB案に27点の大差をつけた。工期短縮を含めた3項目の「コスト・工期」は全体の半分の490点を占める最重要ポイント。ここでの差が最終的に明暗を分けた。

 施工業者に決まった大成建設は、旧計画でスタンド工区を担当する予定だった。このため、当初から労働力や資材など準備面から有力とみられており、それが表れた形となった。JSC関係者によると、B案は竹中工務店、清水建設、大林組の3社が施工業者として組んだことで「審査委員からB案は本当に一枚岩になれるのかという指摘もあった」という。

 A案は日本の伝統建築に用いられる「垂木」を想起させるひさしが特徴で、明治神宮の環境に溶け込んだ「杜のスタジアム」を掲げた。会見に同席した隈氏は「日本にとって大事なプロジェクト。やりがいがある」と意欲。着工は16年12月で、19年11月末に完成する予定。総工費約1490億円は旧整備計画の2520億円から1000億円以上縮減させたが、財源をスポーツ振興くじに依存するなど課題も残る。

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2015年12月23日のニュース