伊調「死んでも勝て」遺言守った…天国の母にささぐ11度目V

[ 2014年12月24日 05:30 ]

優勝インタビューで涙をこらえる伊調

レスリング全日本選手権最終日

(12月23日 代々木第2体育館)
 女子58キロ級で伊調馨(30=ALSOK)が大会11回目の優勝を天国の母にささげた。初戦となった準決勝で酒井美沙紀(18=小倉商高)にテクニカルフォール勝ちを収めると、決勝でも川井梨紗子(20=至学館大)に6―0で完勝した。先月28日に母・トシさんが急逝。調整不足の中でも強さを示した。

 「死んでも勝て」と応援し続けてくれた母のためにも負けられなかった。「いつもよりも勝つことにこだわった」。内容を重視する自分のレスリングは少しおざなりになったが、それでもよかった。優勝を決めた伊調は「お母さんのせいで勝ちにこだわり過ぎました。でもありがとう」と天国の母に感謝した。

 トシさんは先月28日の朝に八戸市内の自宅で倒れて頭を打ち、脳挫傷のために65歳で亡くなった。突然の出来事に伊調も涙に暮れ、「モチベーションが上がらず、ボウ然としていた」と試合の欠場も考えたという。だが、最後はやはり試合に出ることを選んだ。

 「母ならなんて言うかを考えた。どんな状況でも“試合に出ろ”“出るからには勝て”と言っていたと思う」。葬儀を終えて練習を再開したのは今月5日。短い準備期間に加え、58キロ級はエントリーがわずか7人。強すぎる伊調を避けるように前後の階級に選手が分散したため、試合数は少なく、大会を通じて調子を上げていくこともできなかった。

 初戦がいきなり準決勝となったが、18歳の酒井を2分19秒で貫禄勝ち。決勝戦も相手のタックルをこらえ続け、最後までテークダウンを許さなかった。スタンドでは父・春行さんがトシさんの遺影を抱えていた。「いつものように母が鋭い視線で見守ってくれている気持ちでいた」。踏ん張った右足は痛めたものの、少しでもひるむ姿は見せられなかった。

 リオ五輪1次予選会と位置づけられた今大会も全く危なげなかった。「これからは母の“遺言”でもある死んでも勝つということ、プラス自分のレスリングを追求していきたい」。悲しみを乗り越えた伊調は、再び自分のレスリング道にまい進する。

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