松山、米ツアー初優勝!1W折れるも“女神”がアシスト

[ 2014年6月3日 05:30 ]

優勝を決め、18番グリーンでホストのジャック・二クラウス氏(右)から祝福される松山英樹

USPGAツアー メモリアル・トーナメント最終日

(6月1日 米オハイオ州ダブリン ミュアフィールド・ビレッジGC=7392ヤード、パー72)
 米ツアー通算26戦目で怪物・松山英樹(22=LEXUS)が快挙を達成した。3位から出て69で回り通算13アンダー、275で並んだケビン・ナ(31=米国)とのプレーオフを1ホール目で制して米ツアー初優勝。日本男子の勝利は青木功、丸山茂樹、今田竜二に次ぐ4人目、6年ぶり6度目となった。22歳は日本勢、大会史上ともに最年少。石川遼(22=CASIO)は75で通算1オーバーの57位だった。

 大観衆の温かい拍手とともに、今大会のコース設計者でメジャー最多18勝を誇るホスト役の“帝王”ニクラウスが歩み寄ってきた。レジェンドから握手を求められ「おめでとう」と祝福の言葉を贈られたその顔は、充実感でいっぱいになった。大会通算5勝のウッズが不在とはいえ、今年のマスターズ覇者B・ワトソン、世界ランク1位スコットらを破っての快挙に「本当にうれしい。ミスター・ニクラウスのコースで勝ててうれしい」と声を震わせた。

 強心臓こそ最大の武器だ。誰もが緊張するはずの初優勝を懸けたプレーオフ。18番ティーグラウンドへ向かうため、クラブハウスから出てきた松山は飯田光輝トレーナーと目が合い「(1W)折れちゃった。ガハハ」と笑い飛ばした。正規のラウンドの18番で第1打をミスした後に1Wで軽く地面を叩いた際、地面に設置されたテレビの集音マイクに当たり「ポキッ」。それでも1打差の中、2打目を1・5メートルにつけてバーディー。首位に並んだ。シャフトが折れた1Wは入れ替えも可能だったが、予備はない。飛ばし道具を失うピンチを迎えたが、心には余裕があった。

 プレーオフは大会史上初の4日間連続バーディーを奪った好相性の18番。だが、3Wで放った第1打は右のバンカー。2打目もグリーン左方向へ飛んだ。奥へ転がれば、下りの急斜面のアプローチが待つ。ところが、グリーン脇にいた中年女性ギャラリーの右足に「バシッ」。手前に戻る“女神”のアシストで、3打目は球を上げやすい左足上がり傾斜。深いラフから3メートルに乗せると、第1打を水路に入れて4オンした相手より先に沈め、力強く右拳を握った。

 栄光の裏で痛みと闘った。昨年末に違和感を覚えた左手親指の痛みは、左手首から背中にまで伝染。4月のマスターズ前には1カ月のブランクを余儀なくされた。当時「タイガー・ウッズはブランク明けでも活躍する」と豪語していたが、狙った舞台で米ツアー初の予選落ち。以降は体調面も考慮し、2試合に出場し1週休む“2勤1休”の日程で、徐々に試合感覚を取り戻し、患部も回復していった。それでも毎日2時間のケアは欠かさない。下半身中心のトレーニングに加え、マスターズ後は上半身トレも導入。飯田トレーナーは「背中も大きくなった」と体もひと回り成長した。

 優勝で世界ランクも24位から自己最高の13位に急浮上。15、16年シーズンの米ツアーのシードと来年のマスターズ出場権も獲得した。12日には全米オープンが開幕する。「誰が見ても苦しいところから追い付いて勝てたことは自信を持っていいと思う。いやー、うれしいですね」。しみじみと話した最後の言葉に実感がこもった。

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