柔道女子暴力問題第三者委 初会合で手詰まり…

[ 2013年2月20日 06:00 ]

<全柔連・第三者委員会>囲み取材に応じる(右から)田嶋委員、高橋委員、笠間委員長、香山委員、ピエール委員

 全日本柔道連盟(全柔連)が設置した「柔道女子暴力・パワハラ問題」第三者委員会の初会合が19日、東京都文京区の講道館で行われた。前検事総長で弁護士の笠間治雄委員長(65)ら5人が出席。委員会では選手への独自の聞き取り調査を希望しているが、選手側が応じるかは不明。すでに選手への聞き取り調査を開始している日本オリンピック委員会(JOC)からの情報提供の可能性も低く、八方ふさがりのまま検証を進めていくことになる。

 前検事総長に有名精神科医、サッカー指導者育成のスペシャリストとフランス人柔道コーチ、さらには元日本王者の女性空手家。あらゆる角度から問題を検証するにふさわしい顔ぶれがそろった。だが現状は五里霧中。3時間の初会合を終えた5人の委員は、漠然とした話しかできなかった。

 原因は乏しい検証材料にある。笠間委員長によれば、告発した15選手の訴えについては、まだ報道された程度の情報しかないという。20日から全柔連関係者への聞き取り調査を始めるが、それだけでは全容はつかめない。「もともとは女性たちが動きだしたのが発端。話を聞けるなら聞いた方がいいのはもちろん」と選手への調査も行いたい意向だ。

 ただし、実現へのハードルは高そうだ。委員会は氏名などは保秘する方針だが、全柔連が設置した組織だけに選手側には警戒感がある。告発選手の代理人の岡村英祐弁護士は「(委員会の調査希望は)初めて聞いた。選手がどう反応するか。不安は大きいと思う」と協力要請に慎重な姿勢を示した。既に選手への聞き取りを始めているJOCも「こちらと委員会の聞きたいポイントが同じかどうかも分からないので」と連携については否定的。強制力があるわけでもなく、委員会としては「NO」と言われれば手出しはできない。

 全柔連からの諮問内容は2つあり、一連の問題に対する対応や処分の評価と、今後の組織改革に向けた提言だ。どちらもまずは事実を把握し、選手の訴えをきちんと知ることが鍵になる。各委員に非はないものの、その調査自体が難航しそうな気配。公式に予定されている会合は来月上旬までにあと2回しかない。事態解決への大きな推進力となるはずの第三者委員会。だが、全柔連が期待したようには機能しない可能性も出てきた。

 ≪上村会長は聴取に応じる姿勢≫第三者委員会に委ねた側の全柔連・上村春樹会長は「今回の告発の内容やそれに対する連盟の対応も精査し、今後の提言などもしてくれると思う。きちんとやってくれるメンバー」とし「提言が出てくれば、できるところだけというのでは意味がない」と全面的に受け入れる方針を示した。また「自分も事情を聴かれなければおかしいと思う」と話し、第三者委員会の聴取に応じる構えも見せた。

 ▼香山リカ委員 精神科医として、ハラスメントの問題に特化して取り組みたい。今回の問題に(選手が)女性(であること)が、どれだけ関わっていたのかを検証していく。

 ▼高橋優子委員 同じ(空手の)武道家として紙の上の話だけじゃなく、現場をしっかり見て考えたい。実際の現場が良くなるようにやっていきたい。

 ▼田嶋幸三委員 スポーツ界に暴力があることは認めざるを得ない。スポーツ界全体で考えていかなくてはいけない。私は指導者の養成を長くやってきた。この経験を生かしたい。

 ▼ピエール・フラマン委員 フランスは選手が自立しているから体罰はないし、やる必要もない。私の意見はたくさんあるが、委員会が終わるまでは言えない。

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2013年2月20日のニュース