同スコア両校優勝…桐蔭“うれし悔し”初V

[ 2011年1月9日 06:00 ]

両校優勝となり、ともに喜び合う桐蔭学園と東福岡フィフティーン

 第90回全国高校ラグビー最終日は8日、大阪・花園ラグビー場で行われ、昨季と同じカードとなった桐蔭学園(神奈川第2)と東福岡(福岡第1)の決勝は31―31の引き分けで、22大会ぶり4度目の両校優勝となった。桐蔭学園は初優勝で、東日本勢としては97年度の国学院久我山以来13大会ぶりの制覇。東福岡は2連覇で通算3度目の優勝を果たした。桐蔭学園はFB松島幸太朗(3年)ら決定力抜群のBK陣が後半1分までに5トライを挙げて31―10とリードを広げたが、東福岡にFW戦で追い上げられると後半29分に追いつかれて悔しい初優勝となった。

 桐蔭学園は公式戦56連勝の東福岡を土俵際まで追い詰めたが、勝利に届かなかった。それでも、試合後に4度の胴上げをされた藤原秀之監督(42)は「桐蔭の名前を歴史に刻むことができた」。指揮官は神奈川県勢として94年度の相模台工(現神奈川総合産)以来16季ぶりの優勝に安どの表情を浮かべたが、選手たちは満面の笑みとはいかなかった。南アフリカ人の父親(故人)を持つ松島は「うれしい。でも単独で優勝したかった」と本音を漏らした。

 前半から一方的に攻めた。0―5の前半6分に松島が50メートルの独走トライを決め反撃開始。BK陣の高速展開で、後半1分までにWTB竹中の3トライなど計5トライで21点のリードを奪った。主導権を握ってもSO小倉主将は「東(福岡)は絶対に巻き返してくる」と油断していなかった。しかし、FW戦で圧倒され後半7、24分にトライを奪われると、残り1分に再びゴールラインを割られた。ロック谷嶋は「最後まで粘れると思ったけど相手のFWが強かった」と肩を落とした。

 昨季決勝で東福岡に5―31と敗れ「打倒ヒガシ」の合言葉で1年間戦った。特に、松島、竹中、小倉、谷嶋の4人は中学時代、東京都スクール選抜で出場した全国ジュニア大会決勝で、東福岡のエース布巻が所属した福岡選抜に7―36で敗れている。高校進学後も含めると、昨年4月の選抜大会まで公式戦3連敗。前半を15―0と折り返しながら15―25で敗れた選抜大会後は徹底した走り込みを行い、昨年7月下旬のオーストラリア合宿でさらに鍛えられた。竹中は「布巻に勝ちたかった」と唇をかんだ。

 チームにはもう1つモチベーションがあった。松島が大会後に南半球の世界最高峰リーグの下部組織に入団するため南アフリカへ出発予定。竹中は「松島は海外に行ってしまうので、勝って送り出したかった」と話した。仲間の思いを背負って懸命にプレーした松島も「最後まで気持ち良くプレーができてよかった」と感謝の気持ちでいっぱいだった。今大会11トライを挙げた竹中と独走トライを連発した松島を中心に、15人の一体感ある高速ラグビーで大会を席巻した桐蔭学園。グラウンドを後にするフィフティーンには、東福岡より大きな拍手がスタンドから送られた。

 ◆私立桐蔭学園 1964年(昭39)創立。中高一貫の進学校で生徒数は男子約2500人、女子約1300人。創立と同時にラグビー部も創部され、花園には第76回大会に初出場。今回が6年連続10度目。サッカー部、硬式野球部なども全国レベルの強豪。主なOBはプロ野球の高橋由伸(巨人)、平野恵一(阪神)、ラグビーの後藤翔太(神戸製鋼)ら。

 ≪両校優勝は22大会ぶり≫両校優勝は天皇崩御で決勝戦が中止となった第68回大会(1988年度)の大工大高(現常翔学園)と茗渓学園以来22大会ぶり。同点による両校優勝は第27回大会(48年)の秋田工と函館市中(現函館)以来63大会ぶり。

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