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レアル止めたセビリアを操る“錬金術師” 鍵握る16人のスカウト

[ 2017年1月17日 08:30 ]

リーガ・エスパニョーラ・第18節   セビリア2―1レアル・マドリード ( 2017年1月15日 )

<セビリア・Rマドリード>後半、決勝ゴールを決め喜ぶセビリアのFWヨベティッチ(右)
Photo By AP

 海外サッカーの話題を取り上げる「蹴球大陸」が再開です。17年の第1弾はリーガ・エスパニョーラで2位と快進撃をみせるセビリア。15日、ホームで首位レアル・マドリードを2―1と逆転で破り、相手の無敗記録を40試合で止めた。4連勝で2位をキープし、暫定ながら首位と勝ち点1差まで肉薄。日本代表MF清武弘嗣(27)はベンチ外だった。毎年のように主力選手を引き抜かれながら、昨季まで欧州リーグ3連覇を達成するなど躍進を続ける裏には“敏腕GM”の存在がある。

 残り5分から試合をひっくり返した。1点を追う後半40分、セビリアのMFサラビアが蹴った鋭いFKが相手オウンゴールを誘い同点。同47分、途中出場のFWヨベティッチが速攻から決勝点を決めた。今季就任のサンパオリ監督は「レアルを破った勝利はチームにとって重要だ」と大興奮。清武らベンチ外の選手を含め全員で記念撮影するなど、控室は歓喜に包まれた。

 4連勝で2位をキープ。第18節時点で勝ち点39はクラブ新記録。7位だった昨季終了後、チーム得点王のFWガメイロ、MFバネガ、MFクリホビアクら中心選手が移籍し、若き名将エメリ監督もパリSGに去った。公式戦3連敗を喫した開幕直後の不安がうそのような快進撃だ。

 経営的にリーグ中堅のセビリアにとって主力の流出は“恒例行事”。それでも昨季まで欧州リーグ3連覇を果たし、今季も好調なのは、チームの編成責任者が有能だからだ。00年からスポーツディレクター(SD)を務めるモンチ氏の異名は「錬金術師」。理由は格安の移籍金で獲得した選手を育て、高い移籍金で売却するから。就任後クラブにもたらした“売却益”は総額250億円を超える。代表例がブラジル代表DFダニエウ・アウベス(ユベントス)。02年に移籍金20万ユーロ(約2420万円)で加入し、08年に移籍金3600万ユーロ(約43億5600万円)でバルセロナに引き抜かれた。

 今季も補強が的中。マンチェスターCから期限付き移籍の元フランス代表MFナスリは司令塔に定着し、トゥールーズから900万ユーロ(約10億9000万円)で加入したFWベンイェデルはチーム最多の公式戦15得点と活躍。レアル戦で得点に絡んだサラビア、ヨベティッチも新加入だ。

 無名選手を発掘し輝かせる“錬金術”の裏にあるのはモンチSDが築いたスカウトシステムだ。昨年5月、英紙ガーディアンに一端を明かした。欧州を中心に16人ものスカウトを配置し、綿密な候補リストを作成。その数は位置ごとに約250人に上り「監督が“1試合平均11キロ走れて両足が使える左サイドバックが欲しい”と言えば、リストからそのタイプが10人前後が出てくる」と同SD。特長で候補を選出するため“外れ”が出にくい。候補選手が多いので、交渉でマネーゲームになることもない。

 チーム好調の裏で心配は、モンチSDにも“移籍”の可能性が浮上していること。最近ではローマ行きの報道が出ており、セビリア躍進の立役者の動向にも注目が集まっている。

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2017年1月17日のニュース