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魔術師ジダン“監督1年生”で欧州王者「選手目線」の哲学貫く

[ 2016年12月13日 07:35 ]

ランニングするジダン監督(右から2人目)
Photo By スポニチ

 クラブW杯で2年ぶり2度目の優勝を目指す欧州王者のレアル・マドリードが12日早朝に羽田空港着のチャーター機で来日した。ジネディーヌ・ジダン監督(44)、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(31)をはじめとするスター軍団を、約500人のファンが熱狂的に出迎えた。チームは10日の国内リーグ・ラコルニャ戦で公式戦35試合無敗のクラブ新記録を達成。年内最後となる「蹴球大陸」では、銀河系軍団を就任1年目で欧州CL制覇に導いたジダン監督の指導者哲学に迫った。

 羽田空港でのファンの大声援に、ジダン監督は笑顔で手を振って応えた。日本での初練習を前に「選手も私も日本にとても歓迎されていると感じた」と感謝した上で、「レアルは常に勝つことが要求される。クラブW杯の重要性は十分、分かっている」と意気込みを示した。現役時代には前身のトヨタ杯で96年にユベントス、02年にRマドリードで優勝を果たしており「監督としては初来日だが、日本にはとても良い思い出がある」と振り返った。

 フランス代表を98年W杯初優勝に導いた元スター選手の監督歴は、まだ1年に満たない。昨年1月、約7カ月で解任されたベニテス前監督に代わり、2軍にあたるBチーム(3部)監督から昇格。トップチームでの指導経験が全くないことを不安視する声もあったが、5月には欧州CL制覇を果たして自らの手腕を証明した。指揮官が大事にしている哲学が“選手目線での指導”だという。

 「私は選手と近い存在でなければならない」。現役時代の経験を生かし、選手の気持ちをくんだ指導を実践。練習で直接指導するのはコーチだが、自ら選手たちに気さくに話しかける。選手と距離を取り“上から目線”でスター軍団の反感を買ったモウリーニョ監督、ベニテス監督とは対照的で、13~14年にコーチとして仕えたアンチェロッティ監督の指導法に似ている。過去には指揮官との確執が伝えられた主将のDFセルヒオ・ラモスは「選手時代は“魔法”(のようなプレー)で魅了してくれたが、指導者でも同じだ。彼が来てからチームの雰囲気は良くなった」と心酔する。

 「私が良い監督と考えられるのは、勝利を手にする場合にのみ限られるはずだ」。理想としては「美しい攻撃サッカー」を掲げるが、常に勝利が求められるレアルの指揮官としては勝利重視の現実主義者だ。特に宿敵バルセロナとの“クラシコ”などのビッグマッチでは顕著で、手堅い守備からC・ロナウド、ベイルらスピードのある前線の個の力を生かした速攻を駆使する。ダービーとなったアトレチコ・マドリードとの5月の欧州CL決勝はボール支配率で47%と劣りながらも、最後はPK戦を制した。公式戦35試合無敗のクラブ新記録はその積み重ねだ。

 来日直前の10日のラコルニャ戦でC・ロナウド、ベンゼマ、モドリッチら主力を温存し、3―2で辛勝。地元紙に「リスクが高い」と報じられた采配はクラブW杯に向けた準備だ。「今、頭の中に入っているのは木曜日(15日)の準決勝、アメリカ戦だけ。勝てば次を考える」。格下相手でも油断せず、一戦必勝で世界一を目指す。

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2016年12月13日のニュース