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これぞ澤!誰より激しく強く4強貢献…大団円まであと2勝

[ 2015年12月20日 05:30 ]

<AS埼玉・INAC神戸>前半9分、近賀のゴールにイレブンと抱き合って喜ぶ澤(中央)

 今季限りで現役を引退するINAC神戸のMF澤穂希(37)が有終Vへマジック2とした。引退表明後、初の試合となった皇后杯準々決勝(味フィ西)でAS埼玉に2―0で勝利。フル出場した澤は、ゴールこそ奪えなかったものの、球際の強さや危機察知能力など持ち味は健在だ。準決勝の相手は夫の辻上裕章氏が所属する仙台(23日、等々力)に決まり、この日も多くの観衆を集めたレジェンドは、さらに注目度が増す中で次戦を迎える。 

【皇后杯日程と結果】

 不安、寂しさ、そして動揺…。チームを取り巻くさまざまな感情を澤が一掃し、そしてまとめた。現役引退を発表後、初めての試合は負けたら終わりのトーナメント。緊張感が漂う中、INAC神戸は攻守がかみ合って圧勝した。優勝トロフィーを掲げるフィナーレへ、主役が一歩前進した。

 「自分なりに一生懸命やったつもり。でもこの試合だけが特別じゃない。どの試合も特別ですから」

 感情の高ぶりも「全くない」と否定したが、仲間は違った。試合前、主将のFW大野は「みんなが悔いを残すことなくプレーすることが澤さんのためになる」とハッパを掛けた。それが開始9分のDF近賀の先制点となり、同19分のFW高瀬の追加点となった。

 当日券を求めて開場前から約500人が並び、会場は異なるが、昨年の準々決勝・千葉戦の3倍以上となる3666人が集まった。澤コールが鳴り響くピッチに足を踏み入れると、背番号8のスイッチも入った。チャンスを演出し、球際には誰よりも強く、激しく向かった。前半30分にはなでしこジャパンの佐々木監督が「カミソリスライディング」と命名した伝家の宝刀も出た。

 「“また澤さん”“また澤さん”という感じ。何度も助けられたし“澤さんって何人いるんだろう”と思った」と近賀が感嘆したように、相手の攻撃の芽をつぶしたかと思えば、後半2分にはこぼれ球に詰め寄るなどシュート数は2本。惜しくも外れ「決めたいという邪念が入った。得点は後に残してくれていると前向きに考えたい」と苦笑いしたが、90分の澤穂希ショーだった。試合観戦後、佐々木監督も、澤がリオデジャネイロ五輪のメンバー構想に入っていたことを明かした上で「今季一番のプレー。体を一番張っているのは彼女。少女のみならず現役の選手も見習ってほしい」と絶賛した。

 サッカー人生の幕を下ろすことは誰にも相談せず一人で決断。チームに動揺が走ることは分かっていたが、共有意識を持ちたいと、あえて準々決勝直前に仲間に伝えた。確かにショックを受けた選手は多かったが、この日はかつてないほどにまとまった。発表後、チームスタッフに「私がみんなをまとめておいたから」と言った通り、サッカー以外の読みも的確だった。

 次戦が夫の辻上氏が運営・広報部長として所属する仙台というのも何かの縁だろう。「絶対優勝したい。自分らしくチームの勝利に貢献したい」。ラストシーンはまだ先だ。 

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