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なでしこ16強一番乗り!鮫ちゃん先制弾 同郷先輩・安藤に白星贈る

[ 2015年6月14日 05:30 ]

<女子W杯 日本・カメルーン>前半6分、鮫島(右端)が先制ゴールを決め、喜ぶなでしこイレブン

女子W杯1次リーグC組 日本2―1カメルーン

(6月12日 カナダ・バンクーバー)
 サメちゃんがライオンを蹴散らした。W杯カナダ大会で連覇を目指すなでしこジャパンは12日(日本時間13日)、1次リーグC組第2戦でカメルーンと対戦し、2―1で勝利した。前半6分にDF鮫島彩(27=INAC神戸)が先制弾を決め、負傷離脱したMF安藤梢(32=フランクフルト)へ白星を贈った。2連勝で首位に浮上したなでしこは、24カ国中、決勝トーナメント進出一番乗り。次戦はC組1位通過を懸け、16日(同17日)のエクアドル戦に臨む。

 “ジョーズ”の急襲だ。前半6分、川澄の右クロスに鮫島はファーで反応した。持ち前のスピードで猛然と走り込むと、中央で大儀見が空振り、流れてきたボールに左足を伸ばす。スライディングしながら無人のゴールに突き刺した。“不屈の雌ライオン”と呼ばれるカメルーンの戦意をそぐ先制弾。「右サイドを崩してくれたので、ボールに触れば入ると思った」。決勝トーナメント進出をたぐり寄せた。

 先発起用に応えた。初戦のスイス戦は出番がなかったが、クロスへの対応に難のあるカメルーンを右MFの川澄と両翼から崩す狙いから、本職のサイドバックでなく左MFに入った。佐々木監督は「両サイドが最初にチャンスをつくってものにしたのが大きかった。鮫島がスピードを保ちながらゴールにしたのは良かった」と評価。後半からは左サイドバックに位置を変え、守備でも最後まで体を張った。

 前回のW杯優勝メンバーだが、歓喜の後は紆余(うよ)曲折の4年間だった。仙台時代の13年3月に右太腿肉離れと腱損傷で全治3カ月と診断され、そのシーズンを棒に振った。米リーグ・ヒューストンへの移籍が決まっていた14年2月にはケガを再発させて契約は破談。仙台へ復帰するまでの約4カ月間は本人いわく「無職」の状態。目の前のリハビリが嫌になり競技から離れ、傷心旅行に出かけたこともあった。それでも、都内のリハビリ施設で出会ったスノーボードの竹内智香がソチ五輪で銀メダルを獲得する姿には胸を打たれた。サッカーができない時でも世界舞台への思いが消えることはなかった。

 「軽々しく言葉にはできないけど、私には多くの思いがある」と鮫島は言う。11年3月の東日本大震災では当時所属した東京電力マリーゼが活動を自粛。そんな状況下で迎えた前回大会の優勝は自身の力だけではなしえなかったと身をもって知っている。自らが苦難を経験。だからこそ、他人の苦しみに共感できる。スタンドには、初戦で左腓(ひ)骨外果骨折を負い離脱した安藤の姿があった。鮫島にとって小学生の頃から河内SCジュベニールでともに汗を流し「背中を追ってきた」同郷の栃木の先輩へ絶対に白星を贈りたかった。

 決勝トーナメント進出を果たしたなでしこは、連覇への第一関門を突破した。この日の会場のBCプレースは決勝の舞台でもある。鮫島はBCプレースでは昨年10月の親善試合に続いて2戦2得点。連覇への鍵を握る存在だ。「アンチ(安藤)が見せてくれた(体を張る)部分をもっと出していかないと。表現していかないといけない」。大仕事をした鮫島は、まだまだ先を見据えている。

 ◆鮫島 彩(さめしま・あや)1987年(昭62)6月16日、栃木県生まれの27歳。河内SCジュベニールでプレーし、常盤木学園を卒業後の06年に東京電力加入。11年の東日本大震災後に米ボストン、仏モンペリエでプレーし、12年夏に仙台、15年にINAC神戸移籍。Aマッチ通算63試合4得点。1メートル63、54キロ。利き足は右。

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