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行けるとこまで行け!俊輔に非情指令

[ 2008年6月14日 06:00 ]

チームメートが見つめる前で、ドリブル練習する中村

 俊輔が決死の出陣だ。日本代表は14日、敵地でW杯アジア3次予選第5戦のタイ戦に臨む。右足首痛で出場が危ぶまれたMF中村俊輔(29)は前日練習に合流。岡田武史監督(51)から「行けるとこまで行け」と負傷再発覚悟の“非常通告”を受けたことが判明した。その岡田監督も、日本協会の川淵三郎キャプテン(71)から“大勝ノルマ”を課せられた。

【W杯アジア3次予選2組勝敗表
タイ戦予想スタメン


 非情な通告だった。試合会場のラジャマンガラ競技場での公式練習前、右足首痛と苦闘を続ける中村が岡田監督から告げられた。「ケガもあるし5日間、練習をしていないから心肺機能もつらいだろうが、行けるところまで行ってくれ」。選手生命の危機すら顧みない指揮官の通告。だが、日本の至宝はうなずいた。

 決戦を24時間後に控えた公式練習。患部の右足首はテーピングでガチガチに固定されていた。本来ならプレー困難だが、気力でメニューを消化。「結構、痛かったけどギリギリ間に合ったかな。100%ではないけどメンタルと経験でカバーしたい」。3日連続で非公開となった戦術練習では2列目の右に入った。エースの責任感からか居残りでFK、シュート練習もこなした。

 腹は固まった。「全力で行けるとこまで行く。切れたり、痛みだして動けなくなったら、他の選手の方がいい。CKやFK?全然じゃないけど平気だよ」。節々に悲壮感が漂う。紅白戦では右足のシュートを回避したものの、クロスの精度に支障はなかった。早川トレーナーは痛み止め薬を内服させることを明言。ハリ治療、超音波治療など開始直前までギリギリの調整で決戦に備えるという。

 強行出場を決意すると頭はタイ攻略に切り替わった。「勝ち点は少ないけど一番やりづらい。体格が似ていて俊敏性がある」。希代のテクニシャンが、最後に重視したのは闘争心だ。「今までのサッカーを続けながら、あとは最後の一歩だね。そこで闘争心みたいのが出せれば」。痛みと戦う自身に言い聞かせているようだった。

 タイ戦に勝てば3次予選突破の可能性がある。だが、指揮官の非情通告が“悲劇”を呼べば、岡田ジャパンは今後エースを失う。98年W杯直前、当時エースのカズを選考から外す「世紀の決断」を下した岡田監督が、再び見せた非常な一面。「黄金の左足」を支える右足首は90分間、耐えられるのか。爆弾を抱える俊輔は、決死の覚悟でピッチに立つ。

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2008年6月14日のニュース