新喜劇座長・アキ 50半ばのオッサンが夢見て何が悪い!?無二の許しギャグ「いーよー」精神が世界救う

[ 2024年3月11日 14:35 ]

「吉本新喜劇総選挙」で2年連続1位のアキ
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【アキインタビュー(2)】

 ―夢とは?

 「まずひとつはノーバーバルの公演。要は言葉のいらない公演ですね」

 ―言葉のない公演ですか。吉本芸人さんからは聞いたことがない発想ですね。

 「そうなんです。いま大阪はとんでもなく外国人の方が来られてますよね。でも、吉本は全然ここに向けた商売ができてないと思うんです。ぼく、8年間のヒマなときにニューヨークやラスベガス、韓国でもノーバーバルのショーを見たんですよね。ショー自体もおもしろかったんですが、客席でヨーロッパ系、アフリカ系、アジア系の子どもたちが大爆笑してるんですよ。これはすごいな、と思って。なんか涙が止まらなくなって。日本の小さいところでいがみ合っているのがアホらしくなって。でも、悔しさもあったんです。日本の笑いは絶対に通用するはずなんです。世界に向けて!とかそういうイキった感じではないんですけど(笑い)、子どもたちの笑顔を見ていたら絶対にやってみたいと思ったんですよね」

 ―実際に進行中なのでしょうか?

 「いくつかノーバーバルのネタを作ったんですが、万博のお仕事でちょっとやらせてもらったんです。どう見てもらえたかはわからないんですが、反応は悪くなかったですね」

 ―それが現在の夢なんですね。

 「いやいや、まだまだいっぱいありますよ」

 ―(笑い)すごいバイタリティー。

 「台本のない新喜劇というものをやらせてらってて、全部アドリブなんです。設定も何も決まってない。例えば、お母ちゃんええかげんにしてや、と僕が振る。言われた女性は“私、お母ちゃんやったんか”となって色々考えて“あんたこそやで。急に昨日ブラジルから帰ってきて、何してたんや”とか言われる。僕は“おれブラジルにおったんか”と思いながら“いやコーヒー豆がな…”としゃべり始める。こんな具合です」

 ―演者が精神崩壊を起こしそうですね(笑い)。

 「実はテレビでも何度かやっていて、芸人以外も起用したんですが、トップクラスの役者さんでも音を上げてしまって(笑い)。その点、芸人は毎日ネタのことを考えているので対応可能な人間が多いし、吉本にはそんな才能があふれ返っています。テレビやラジオになかなか出られない子も、こういうところで引き上げてあげたいんです」

 ―お話を聞いていると、とても体1つではでは無理な気がします。

 「そうなんですよ。あと2人ほしいんです。お願いします(笑い)」

 ―アキさんは昔から芸人になるのが夢だったのでしょうか?

 「まったく(笑い)。歴史に名前を残したい!これだけでした。で、どうしたらええの?となって、お金稼いで広めの家買って、ええ車乗って、幸せな家族で、それで人生終わり?って17歳のときに思ったんです。あと40年、50年したらおじいちゃん。死ぬやん!早っ!とあせりだしました。歴史に名前を残したくても英雄は無理、犯罪者はお父さんお母さん悲しませたくない。どうする?芸能界?全然興味ないねんけど。それでとりあえず東映に入ってスタントマンをしたんです」

 ―あ、お笑いは興味なかったんですね?

 「全然。危ないことばっかりしてて、そんな時に自衛隊やった相方が辞めたいと言い始めたんです。ぼくも大変やったから芸人目指そか?となったんです。そこでイヤとなったら吉本に行かなかったと思うので、まあようついてきてくれたと思います。それだけは今も感謝しています」
=終わり=

 【取材を終えて】撮影も入れて1時間の取材予定が、ほとんどインタビューだけで1時間かかってしまうほど、たくさんの話が聞けた。実は夢の話はまだあって、1つは子どもたちのために小学校や中学校で新喜劇を上演すること。もう1つは「移動新喜劇」と題して、被災地や介護施設などにトラックに即席のステージを作って上演すること。いずれもすでにスタートしている企画だ。

 アキがやりたい夢は一見バラバラのように見えるが、実は一貫している。未来を担う子どもたち、チャンスに恵まれていない芸人仲間、大変な状況に苦しむ社会的弱者。そんな人たちに笑ってもらいたいという気持ちだ。ともすればキツめなツッコミが多い新喜劇で唯一無二の、許しのツッコミ「いーよー」を発明したアキ。その優しい眼差しで、穏やかな社会の実現を願っている。(江良 真)

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