人間国宝認定にも、あくまで自然体の五街道雲助

[ 2023年7月22日 20:46 ]

人間国宝に選ばれた古典落語の五街道雲助さん
Photo By 共同

 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】落語家の六代目五街道雲助(75)が重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。五代目柳家小さん、三代目桂米朝、十代目柳家小三治に続き、落語界からは4人目の栄誉となった。

 2021年10月に小三治が81歳で亡くなり、「さて次に(国宝)になるとしたら、いったい誰がふさわしいか?」と筆者も想像をたくましくしていたが、有力な候補者として雲助の名前が頭の中にあったのは言うまでも無い。

 東京・墨田区本所の生まれ。明治大学を中退して1968年に十代目金原亭馬生に入門。「役の心を演じるんだ」という師匠の教えを忠実に守ってきた。81年に真打昇進後、幕末から明治に活躍した三遊亭円朝の「双蝶々」「名人長二」などの作品に取り組んできたほか、「唐茄子屋政談」「宮戸川」といった長編の人情噺にも秀で、情緒あふれる語りと巧みな人物描写には定評がある。

 2009年4月のことだから、もう14年も前になるが、スポニチ本社からもそう遠くない深川江戸資料館小劇場で「とっておき寄席!」と題するDVDの収録が行われ、これに通った。亭号別に実力者が参加し、古今亭&金原亭の巻に雲助も出演。これまた円朝作と言われる「お若伊之助」を熱演した。懐かしさがこみあげてくる。

 自ら珍しい名前の持ち主。弟子にも真打昇進と同時にユニークな名前をつけることで知られる師匠だ。三代目桃月庵白酒(54)、四代目隅田川馬石(54)、三代目蜃気楼龍玉(50)はいずれ劣らぬ本格派。雲助から円朝ものも伝授され、高座にかけている。

 19年2月、文京シビックホールでの「雲助・白酒親子会」も思い出す。弟子の白酒が「お茶汲み」と「笠碁」、師匠の雲助が「千両みかん」と「夏泥」をかけ、熱い師弟共演を堪能した。

 人間国宝について雲助は「肩書きに負けると自由な芸ができなくなる」と話し、「いつも通り」を心掛けて高座に臨みたいと謙虚に語る。この自然体が心地良い。師匠の十代目馬生は82年9月13日に食道がんのため54歳の若さで早世。昭和の名人と言われた五代目古今亭志ん生の長男で、三代目古今亭志ん朝の兄、そして女優池波志乃(68)の父親としても知られた枯淡の人。大の酒好きでも知られたが、今ごろは天国で祝杯をあげているに違いない。

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