夏休みを利用しての東北旅 往復にはJRの「青春18きっぷ」を使う

[ 2023年7月22日 08:00 ]

天然の芝生が広がる種差海岸。ここは日本?
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 【笠原然朗の舌先三寸】5枚つづりで1万2050円。その日のうちなら2410円で格安で遠距離を移動できる。ただし使えるのは鈍行列車のみ、などルールはある。

 旅の初日は、青森県八戸市のJR八戸線種差海岸まで移動する。事前に予約した民宿には遅くとも午後7時までには到着したい。
 逆算した結果、豊島区内にある自宅の最寄り駅の始発電車に乗る必要がある。

 池袋発5時。赤羽、宇都宮、黒磯、新白河、郡山、福島、白石、仙台、小牛田、一ノ関で乗り継いで盛岡着が午後4時11分。112駅を11時間11分でつないだ。東北新幹線を利用すれば2時間13分。5倍以上、時間は掛かるが運賃は6分の1以下である。

 宇都宮発は6時57分で黒磯着が7時49分。車内は通学、通勤客で大混雑だ。8時42分の新白河発には途中から21人の保育園児と引率の先生が乗ってきた。

 聞けば、郡山でプラネタリウムへ行くのだとか。「初めて電車に乗る子もいるんです」。一人旅の旅行者もいる。向かいに座った60歳台とおぼしき男性が熱心に読んでいたのは城山三郎著「少しだけ無理をしないで生きる」。鈍行列車の旅はいろいろな人間模様を見ることができるのも楽しい。

 鉄道は1本の線である。駅は線上に打たれた点で、点を中心にして大きな面が広がっている。面とはそこに住む人、働く人、学ぶ人らの生活圏だ。

 列車が駅に停車してドアが開く。降りる人、乗る人の生活をより身近に感じることができるのが鈍行列車の旅だと思う。点と点を速く移動することに特化した新幹線移動ではこうは行かない。
 さて盛岡から先。八戸までの区間は第3セクターのIGRいわて銀河鉄道の乗り換えなくてはならない。「青春18きっぷ」は使えない。銀河鉄道も魅力的だが、八戸までの所要時間は1時間47分で料金は3110円。新幹線なら4090円で、所要時間は27分。1000円ほどの差額で時間を買って、新幹線で移動した。

 盛岡~八戸間はあっという間。だがトンネルばかりで車窓を眺める楽しみもない。

 JR東海が建設中のリニア中央新幹線である。トンネルも多く、猛スピードで移動。旅情も何もあったものじゃない。昔、広告のキャッチコピーで「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」というのがあったことを思い出した。

 八戸でJR八戸線に乗り換え、白銀駅からバスで種差海岸へ到着したのは午後6時20分。待っていたのは天然芝生地の先に広がる太平洋だった。

 文豪・司馬遼太郎が「どこかの天体から人がきて地球の美しさを教えてやらねばならないはめになったとき、一番にこの種差海岸に案内してやろうとおもったりした」と書いた地だ。長旅のご褒美には十分過ぎた。 

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