「らんまん」演出・渡邊良雄氏 「佐久間由衣さんは微妙なニュアンスの芝居が巧み」

[ 2023年6月21日 08:30 ]

連続テレビ小説「らんまん」で槙野綾を演じる佐久間由衣(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「らんまん」でチーフ演出を務める渡邊良雄氏がインタビューに応じ、主人公・万太郎(神木隆之介)の姉・槙野綾を演じる俳優の佐久間由衣の魅力や演出方法などについて語った。

 ──「らんまん」収録開始前、佐久間さんにどんな印象を抱いていましたか?
 「連続テレビ小説『ひよっこ』などで拝見していました。すらりとしていて、手足が長く、サバサバしている人という印象でした」

 ──起用に至った理由は?
 「綾は弟の万太郎との対比を生み出すキャラクターにしたいと思いました。家業は必ず男性が継ぐという時代に綾は女性として酒造りへの強い思いを秘めています。それには芯の強さが必要です。さらに、ヒロインの寿恵子を演じる浜辺美波さんとは違う雰囲気にしたいと思いました。その二つのことから佐久間さんに演じていただきたいと考えました。現実としてはあの時代に佐久間さんのようなスタイルの良い女性は存在しなかったと思います。でも、その特性によって、土佐の小さな町の伝統的な家業の中にいる窮屈な感じが出ると思いました」

 ──実際に演出してどんな印象を受けましたか?
 「相手のセリフを聞いた時の感情の動かし方、表情の切り替えなど、微妙なニュアンスを出す芝居が巧みだと感じました。魅力的な芝居をされる人だと思いました」

 ──綾が蔵人の幸吉(笠松将)との距離を縮めていく展開が印象的でしたが、どのように演出しましたか?
 「綾が最初から女性として幸吉に惚れるような描写をできるだけしないでほしいとお願いしました。最初はあくまでも酒造りに興味を持つ自分を初めて受け入れてくれた人ということだけで、そこから距離を縮め、好感を寄せていくようにしたいと思いました。恋愛ドラマの中で誰かのことをすぐに好きになる女性のようなキャラクターにしたくないと考えていましたが、佐久間さんは的確に演じてくれました」

 ──佐久間さんは色気を抑えて演じたのでしょうか?
 「そう思います。例えば、幸吉と話すシーンで、あまり目を見ないようにしています。綾の関心は幸吉ではなく酒造りのためのこうじに向かっています。自分が巻いていたマフラーを幸吉に巻くシーンでも、好意を寄せている男性に巻いているようには見えないようにしています。あの時点では、綾は竹雄(志尊淳)から思いを寄せられていることにも気づいていません。関心を寄せているのは酒造りで、恋愛には疎いキャラクターになっていると思います」

 ──佐久間さんと志尊さんの2人の芝居に関してはどのように演出していますか?
 「ベクトルとしては竹雄が綾を思う気持ちの方が強いです。だから、基本的には、志尊さんの芝居を佐久間さんがどう受け止めて芝居をするかということになります。志尊さんの芝居の出方によって佐久間さんの芝居が変わっていきます。佐久間さんには『台本のト書きにとらわれなくていいです』とお伝えしました。例えばト書きに『泣く』と書かれていても、志尊さんとの芝居の中で涙が出てこないのなら、それで良いということです。必要なのは2人の芝居のキャッチボールです。その点で2人の組み合わせはとても良いと思います。それと、2人は目がくりっとした感じが似ていて、ビジュアル的な距離感の近さが芝居にうまく乗っている印象です」

 ──今後、綾と竹雄はどのように描かれるのでしょうか?
 「この先に綾が竹雄に弱音を吐くシーンがあります。女性が弱っている時に男性から優しい言葉をかけられると、それにすがりつきたくなるという流れがよくありますが、そうしたくないと思いました。竹雄は綾の弱音を聞くと、あえてそれを振り切ります。それは恋愛の駆け引きではなく、弱音を吐くのは綾らしくないという考えからです。綾の周りにはそんなことを言ってくれる人はいないので、綾は竹雄の存在の大きさに気づきます。そこから先はまたお楽しみです」

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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