「どうする家康」古沢マジック再び!三方ヶ原2部構成&夏目広次の名前間違い伏線 番組CPも唸る舞台裏

[ 2023年5月19日 08:00 ]

大河ドラマ「どうする家康」第18話。夏目広次(甲本雅裕)の“名前間違いの真相”が明らかに(C)NHK
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 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は14日、第18回が放送され、主人公・徳川家康が武田信玄に惨敗した「三方ヶ原の戦い」(元亀3年、1573年)の“真実”が描かれた。家康の人生最大のピンチを2部構成で壮大かつ丹念に紡いだドラマ前半のクライマックスの一つ。事務方トップ・夏目広次の忠義と“名前間違い”の理由に、号泣の視聴者が続出。制作統括の磯智明チーフ・プロデューサー(CP)に作劇の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

 第18回は「真・三方ヶ原合戦」。討ち取られたかに思われた徳川家康(松本潤)。その亡骸は、金荼美具足(きんだみぐぞく)に身を包んだ夏目広次(甲本雅裕)のものだった。

 夜、三方ヶ原の集落。逃げ延びた家康たちが潜んでいるところに現れたのは、夏目だった。家康は思い出した。夏目の名前をいつも間違えるのは、幼少期の記憶があったため。「お主は幼い頃、わしと一番よう遊んでくれた、夏目“吉信”じゃろ!」。三河一向一揆の際、謀反の罪を不問とされた夏目は「足りませぬ。一度ならず二度までも、殿のお命を危うくした。この不忠者を、ここまで取り立ててくださった。これしきの恩返しでは足りませぬ」――。

 24年前、蒲郡の港。夏目“吉信”は幼き家康(竹千代、川口和空)を織田にさらわれる失態(第2話、1月15日)。家康の父・松平広忠(飯田基祐)は夏目に改名を促し、切腹を免じた。

 嫌がる家康から強引に剥ぎ取った金荼美具足をまとい、夏目は「せめて、24年前に果たせなかったお約束を、今、果たさせてくださいませ。今度こそ、殿をお守りいたします」。家康は「駄目じゃ、吉信、駄目じゃ」と嗚咽。夏目は「殿が死ななければ、徳川は滅びませぬ。殿が生きてさえおれば、いつか信玄を倒せましょう。殿は、きっと、大丈夫」。幼き家康に掛けた言葉と同じものを最後に伝え、家康の身代わりとなるべく、敵兵に向かっていった…。

 「三河一向一揆」「伊賀越え」と並び、家康の“3大危機”に数えられる「三方ヶ原の戦い」が、第17回「三方ヶ原合戦」(5月7日)に続いて2週にわたって描かれた。

 放送終了後(14日午後9時)にはツイッターの世界トレンドを席巻。1位「#どうする家康」、7位「夏目広次」、8位「夏目さん」、12位「夏目吉信」、13位「空城の計」、17位「甲本さん」、20位「三方ヶ原」、29位「夏目殿の名前」、43位「伏線回収」、44位「大河ドラマ」、46位「身代わり」と関連ワードが並んだ。

 江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶりとなったが、その「徳川家康」でも「三方ヶ原の戦い」は第13回「三方ヶ原合戦」1話のみ。冒頭の信玄の甲斐出発から、家康の敗走・浜松城帰還、「空城の計」による武田軍の引き揚げまで、約30分間だった。今作のスケールの大きさが分かる。

 磯CPによると“前後編構成”かつ「映画のシン・シリーズ入り?」などと話題の副題も脚本・古沢氏のアイデア。「家康の生涯においては最も大きな転換点の一つなので、僕も2回に分けて描くべきエピソードだと思いました。家康はよくぞ生き残りましたよね」と振り返った。

 初回(1月8日)の大高城への兵糧入れからラストへの緊迫感、第9回(3月5日)の本多正信(松山ケンイチ)が軍師だった「三河一向一揆」の臨場感などに続き、今回もシナリオハンティング(シナハン、脚本作りのための取材)が生きた。古沢氏とスタッフは2021年5月から約半年、家康ゆかりの地を訪問。ほぼ全部を網羅した。

 磯CPは「現在の三方ヶ原は開発が進んで、一大住宅地になっているんです。その台地を見渡すには、パチンコ店の屋上に上がるか、高架になっている遠州鉄道に乗るぐらいしかないと思います。僕たちも見尽くして、三方ヶ原が広大な土地だということは実感しましたけど、並び立つマンションの間に畑があるという感じ。徳川軍や武田軍が通った山道や戦った場所に所々、石碑が残っているぐらいで、史料的にも逸話や伝承が多いんです。なので、三方ヶ原に関しては、ドラマとしての面白さをより追求しようという方向に舵を切りました」と明かした。

 時間軸を巧みに操る、ミステリー仕掛けの2部構成は古沢脚本の真骨頂。それに加え、初回から張り巡らされた“名前間違い”の伏線も見事だった。

 磯CPは「三方ヶ原で家康の身代わりとなった夏目吉信の名前は、公式の史料には一切、残ってないんです。なので、実在したのかさえ怪しいと言われることもある不思議な人物。一方で、この時に誰と誰が会った、誰が税金を収めたというような役所の記録には、夏目広次の名前が出てくる。ここに古沢さんが着目して、夏目が新しい名を名乗らざるを得なくなった理由、だから家康が夏目のことを覚えておらず、その後も名前を間違えるというエピソードを創作されたんです。『そう来たか!』と今回も唸らされましたね」と称賛した。

 織田信長の退却戦「金ヶ崎の退き口」(元亀元年、1570年)。お市の方が袋の両端を縛った小豆を信長に送り“挟み撃ち”“袋の鼠”のピンチを伝えたという逸話を、阿月(伊東蒼)に“擬人化”した第14回(4月16日)などに続き、またも“古沢マジック”が炸裂した。

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