戦メリ、愛のコリーダ…没後10年、大島渚監督が遺した膨大資料から映画人生を紐解く 第7章構成の展覧会

[ 2023年4月7日 22:43 ]

11日に開幕する「没後10年映画監督 大島渚」展では監督の言葉も展示される
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 東京・京橋の国立映画アーカイブで11日に幕を開ける展覧会「没後10年 映画監督 大島渚」のプレス向け説明会が7日、7階展示室で行われた。

 「愛のコリーダ」や「戦場のメリークリスマス」などで世界に知られた大島監督は2013年1月15日に80歳で永眠。監督が自ら体系的に遺した膨大な作品資料や個人資料を公開し、その映画人生を俯瞰(ふかん)する企画で、次の7章で構成された。

 (1)第1章 出生から学生時代、そして撮影所へ
 (2)第2章 ヌーヴェル・ヴァーグの旗手として
 (3)第3章 松竹退社と模索の季節
 (4)第4章 独立プロ・創造社の挑戦
 (5)第5章 創造社の解散と国際的活躍
 (6)第6章 大島映画の美的参謀、戸田重昌
 (7)第7章 幻の企画と晩年

 各章に貴重な資料が目白押しで、映画人・大島渚の生きざまが浮き彫りになる。

 例えば第1章。「進学適性検査の受験票」が見える。大島監督は京都大学で学んだが、第2志望を大阪市立大学、第3志望を大阪外国語大学と記入している。学生時代の興味深い一コマだ。

 第4章には大島監督と小山明子夫妻のカンヌ旅行のスナップ写真が見える。1968年の撮影だ。「絞死刑」を映画祭のマルシェ(見本市)に出品した際のショットで、ここからカンヌとの長い付き合いが始まる。

 第5章は世界にセンセーションを巻き起こした「愛のコリーダ」と、カンヌ映画祭で監督賞を贈られた「愛の亡霊」、そして「戦場のメリークリスマス」を中心としたコーナー。「戦メリ」といえば、3月28日に71年の生涯を閉じた坂本龍一さんとデビッド・ボウイとのキスシーンが有名だが、実はフィルムに欠陥があり、つないで編集されていたことが明らかにされる。

 終章では、企画しながら映画化が実現しなかった「日本の黒幕(フィクサー)」の企画ノート(79年)と、「ハリウッド・ゼン」のスケジュール表(91年)などが目を引く。同作品は創生期のハリウッドで活躍した早川雪洲を坂本龍一さんの主演で撮影に入る予定だったが、資金難などから幻に終わった。さらには病に倒れた大島監督のためにビートたけしが送った激励イラストなども展示された。

 説明会には820ページに及ぶ「大島渚全映画秘蔵資料集成」(21年)を編み、今回も協力者として名を連ねる樋口尚文氏が出席。(1)地層のように堆積した、とんでもない量の資料(2)想像の渦(3)大島作品の美学を貫いた戸田重昌さんの仕事…これらをキーワードに楽しんで欲しいとアピールした。

 展覧会は8月6日まで開催される。同時に11日から5月28日までは小ホールで計45作品の回顧上映会も実施される。大島ファンにはたまらない一大イベントだ。

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