羽生九段も感服した「藤井の8六歩」19歳新王将へ祝福メッセージ「令和の新感覚」今後も期待

[ 2022年4月12日 05:30 ]

王将就位式で王将盾を手に笑顔を見せる藤井王将(撮影・会津 智海)
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 将棋界で唯一「永世7冠」の称号を持つ羽生善治九段(51)が11日に就位式に臨んだ藤井聡太王将(19)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に祝福メッセージを寄せた。渡辺明名人(37)から王将位を奪取した第71期7番勝負。その全4局を振り返り、印象的だった指し手に第1局41手目の▲8六歩を挙げた。「令和時代の新感覚」と指摘し、今年度も新機軸を打ち出すよう期待した。

 藤井が渡辺から王将位を奪い、史上最年少5冠(19歳6カ月)を達成するまで記録を保持したのが羽生(22歳10カ月)。1996年(平8)に当時の全タイトルを独占し7冠に輝き、平成の将棋界の頂点に君臨し続けたレジェンドだ。そんな羽生が令和の天才・藤井の第71期王将戦の全4局について、スポニチ本紙の取材に「1局目の▲8六歩がとても印象に残っています」と語った。

 のちに「藤井の8六歩」とも呼ばれ、渡辺を昼食休憩を挟んで1時間31分の長考に沈ませた一手。居飛車党にとって9枚中、最も動かしづらい歩を稼働させ、▲8六歩に△1四歩、さらに▲6六歩と突いた。

 局後、藤井は7三にいる渡辺桂の活用を封じる狙いと明かしたが、渡辺の度肝を抜く一手となったほか、第1局立会人の森内俊之九段(51)も「何が起きたか分からないぐらいの衝撃。10年前の感覚ではまずあり得ない手」。将棋界に大きな激震を走らせた。

 そんな藤井が迎えた王将の就位式。羽生は「令和の新感覚で、今後もさまざまなアイデアを大舞台で披露されることを期待しています」。将棋界を驚かせる藤井の発想を「令和の新感覚」と表現した。

 歴史をさかのぼれば「平成の新感覚」を武器に台頭したのが羽生だった。中終盤に手練手管の棋士たちが思い及ばない一手を放ち、勝利を引き寄せる。これが「羽生マジック」と呼ばれ、平成の新感覚の象徴だった。

 そんな羽生が届けたエール。藤井との前回対戦、昨年11月の王将戦挑戦者決定リーグでの記憶も伏線にありそうだ。その97手目、羽生が歩を打って藤井王に肉薄したのに、藤井は構わず飛車を5筋から8筋へ旋回。わずか8手後、羽生を投了へ追い込んだ。

 藤井は昨年度、手応えのあった自らの指し手の一つにこの旋回を挙げ「見た目より受けにくい攻めを選べた」と羽生の読みにない踏み込みを実行できた手応えを語っていた。羽生は身をもって「アイデア」を体験していた。

 だからこそ、令和の新感覚が発揮されることを楽しみにしている。

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