海老蔵改め“令和の團十郎” 襲名披露へ決意 伝統と革新「命懸け」

[ 2020年2月8日 05:30 ]

会見で言葉を交わす市川海老蔵(右)と堀越勸玄くん(撮影・木村 揚輔)
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 歌舞伎俳優の市川海老蔵(42)が7日、「十三代目市川團十郎白猿」襲名披露興行(5~7月、東京・歌舞伎座)の会見に出席した。「勧進帳」「助六由縁江戸桜(助六)」といった市川宗家ゆかりの演目を中心に上演することを発表。八代目市川新之助を襲名する長男の堀越勸玄(かんげん)くん(6)は、明治以降史上最年少となる若さで「外郎売(ういろううり)」の主演を務める。

 「伝統」と「革新」が融合した“令和の團十郎”の第一歩だ。
 3カ月間かけて行われる襲名披露興行は市川家に伝わる歌舞伎十八番が中心となることを発表した。2回ずつ上演される「勧進帳」「助六」について「父(十二代目市川團十郎さん)から教わった2演目は外せない」と指摘。「市川家としてやらなければいけないこと、私がやりたいこと、それが重なった形です」と大名跡の重みをかみしめた。

 「團十郎」を名乗ることは、舞台上だけでなく歌舞伎界そのものを引っ張っていくことも意味する。「浮かれている感じは一つもない。自分のできることを精いっぱいやっていくのが全て」と気合十分。「勧進帳」で演じる武蔵坊弁慶を引き合いに「命懸けで向き合う男(弁慶)の姿と、團十郎を襲名する私の姿が重なるようにできたら」と並々ならぬ覚悟を明かした。

 海老蔵はこれまで歌舞伎界にさまざまな新風を吹かせてきた。自身がかねて訴えてきた歌舞伎界の“働き方改革”もその一つ。今年1月には、松竹が4月以降の同社製作の歌舞伎興行のうち、25日間の公演については休演日を設定すると発表。5、6月の今回の 7月公演は3部制となった。歌舞伎座で行われる舞台は25日の昼夜2部制が通例だが、公演期間が20日間と短縮され、働き方改革につながっている。海老蔵にとって初めての試みで、観客には観劇可能な公演数が増えるメリットがある。

 市川家の歴史で「市川團十郎白猿」という名前も初めて。「12時間や干支(えと)など物事は“12”になったら1回、“1”に戻ったりします。自分は13人目ということで原点回帰という意味も含まれている」と力説。過去に非業の死を遂げる「團十郎」が多いことを引き合いに「輪廻(りんね)から少しでも脱却したいというような気持ちを含めて、新しい一歩を踏み出すんだという気持ちがございます」と、新たな歴史をつくる「團十郎」となることを誓った。 

 【歴代の團十郎】
 《舞台で刺殺、20代で病死…》360年の歴史の中で数奇な運命をたどった市川團十郎は多い。初代(1660~1704年)は劇作家としての才能も発揮して人気役者となった45歳の時、舞台上で刺殺された。原因はいまだ不明。人気へのやっかみとも伝えられている。三代目(1721~1742年)と六代目(1778~1799年)はともに22歳の若さで病死した。
 七代目(1791~1859年)はその人気ぶりに危機感を抱いた幕府によって上方(関西地方)に追いやられ、息子の八代目(1823~1854年)は32歳で自殺。幕府の処置への抗議だったとも言われている。最長寿は十代目(1882~1956年)の73歳。海老蔵は以前、雑誌のインタビューで「僕は長寿記録の更新を目指したい」と語っている。

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