77歳角川春樹氏 10年ぶりメガホン「生涯最後の監督作になる」

[ 2019年8月6日 05:30 ]

「生涯最後」の監督作に意欲を見せる角川春樹氏
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 映画プロデューサーで出版社・角川春樹事務所会長兼社長の角川春樹氏(77)が映画「みをつくし料理帖」で10年ぶりの監督に挑む。当初はプロデュースのみの予定だったが、家族の後押しを受けて決意。主演に松本穂香(22)を抜てきし「生涯最後の監督作になる」と今月下旬のクランクインを心待ちにしている。

かつて日本映画界の風雲児と呼ばれ、角川映画の一時代を築いた角川氏。監督としても90年「天と地と」(配収50億円)など数々のヒット作を生み出した手腕を10年ぶりに発揮する。

 原作は自社から出版し、全10巻で累計400万部を超える高田郁氏の同名時代小説。09年の第1巻刊行時「ゲラを読んだ時点で恥ずかしいくらい感動の涙を流した」とほれ込み、ベストセラーに押し上げた。

 それほど思い入れは強く、当初からプロデューサーとして映画化に向け奔走。話がうまくまとまらない時に、背中を押したのは09年に結婚した妻と小学1年の息子の存在だ。「女房に“監督をやって初めてあなたの思いが伝わる”と言われた。子供は出版社の仕事と言ってもまだ分からないけれど、映画監督なら分かるだろう」と自らメガホンを取る決意を固めた。

 天涯孤独となった澪が、江戸で料理人として頭角を現し、さまざまな苦難を料理の力で乗り越えていく物語。ヒロインにはTBSのドラマ「この世界の片隅に」を見て「若いのにうまいなあと思った。笑い顔が魅力的で感情表現が豊か」と松本に白羽の矢を立てた。 松本は「澪は芯の強さ、周りを包み込むような優しさをいっぱい持っている人。演じることで、物語の中に流れる温かさを感じていただけるように精いっぱい頑張りたい」と意欲。既に江戸時代の包丁を使って料理の特訓を受けているという。

 澪の幼なじみで花魁(おいらん)のあさひ太夫を奈緒(24)、吉原の料理番の又次を中村獅童(46)が演じる。他にも「端役に至るまで、今の映画界ではオールスターキャストになる」と豪語した角川氏。令和の「おしん」として海外の映画祭出品や配給も視野に入れており「成功ではなく大成功を狙っていく」とぶち上げた。公開は来年秋予定だ。

 ▽みをつくし料理帖 8歳の澪と野江は大坂で大洪水に遭い、離れ離れになってしまう。時は流れ、江戸のそば店に拾われた澪は次々に看板料理を生み出し評判を呼ぶ。そんな折、吉原の料理番の又次が、花魁のあさひ太夫のための料理を作ってほしいと頼みに来たことから、澪の運命が動きだす。12、14年に北川景子(32)主演でテレビ朝日の特別ドラマ、17年には黒木華(29)主演でNHKの連続ドラマが放送されている。

 ◆角川 春樹(かどかわ・はるき)1942年(昭17)1月8日生まれ、富山県出身の77歳。65年に角川書店に入社し、75年、社長に就任。76年「犬神家の一族」から映画製作に乗りだし、「野性の証明」、「探偵物語」などのヒット作を放ち角川映画ブームを起こす。82年「汚れた英雄」で初監督。角川春樹事務所を95年に設立。製作映画は70本を超える。

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