小池一夫さん死去 82歳「子連れ狼」原作、劇画盛り上げ海外でも高評価

[ 2019年4月20日 05:30 ]

小池一夫さん
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 ドラマや映画でも大ヒットした漫画「子連れ狼」などの原作で知られる作家の小池一夫(こいけ・かずお、本名俵谷星舟=たわらや・せいしゅう)さんが17日午後8時ごろ、肺炎のため東京都内の病院で死去した。82歳。秋田県出身。葬儀・告別式は近親者で行った。1960年代後半から多くの漫画家と組んで劇画ブームを盛り上げ、「劇画村塾」などで後進の指導にも力を注いだ“漫画界の巨人”だった。

 自らの訃報を世間に伝えたのは、75歳を過ぎて始めたツイッターだった。90万人を超えるフォロワーに向け、遺族が別れの言葉をつづった。昨年8月、体調不良で入院してからも頻繁に更新。含蓄ある言葉が、幅広い世代の心に響いていた。

 亡くなった17日は、午前に「ルパン三世」のモンキー・パンチさんが肺炎のため81歳で死去したとのスポニチ本紙報道に「人気争いをしたライバル。さみしくなるなぁ」などと投稿。“戦友”に哀悼の言葉を送っており、遺族によると「ルパンのファンだった」と肩を落としていた。その後、夜になって容体が急変。会話ができなくなり、娘が見守る中、静かに息を引き取った。

 大学入学で上京し、弁護士を目指したが挫折。国家公務員中級試験(当時)を受け、当時の農林省関連の仕事に就いたものの、1年で退職した。「桃太郎侍」で知られる時代小説家の山手樹一郎に弟子入りし、小説家を志しながら雀荘やゴルフ場などで働く、もんもんとした日々を過ごした。

 転機は68年に漫画家さいとう・たかを氏(82)のプロダクションが実施した脚本家の公募で認められたことだ。当時は、リアルな画風で青年向けのテーマを描く「劇画」が貸本漫画からメジャー誌に広がった頃。初期の「ゴルゴ13」の原作に携わるなど、才能が一気に開花した。

 70年に独立し、漫画アクションで連載した「子連れ狼」(作画・小島剛夕氏)が大ヒット。さすらいの旅を続ける剣の達人、拝一刀と息子の大五郎の物語は映画やテレビドラマにもなり、海外でも人気となった。同時期に「御用牙」「修羅雪姫」「忘八武士道」なども映像化。70年代を代表する作家となった。

 「子連れ狼」は日本だけでなく、海外でも高く評価され、80年代後半には「Lone Wolf and Cub」として出版された。映画監督のクエンティン・タランティーノ氏(56)ら海外のトップクリエーターの心もつかんだ。アメコミ界の巨匠で、マーベル・コミックの故スタン・リー氏とも尊敬しあう仲だった。「東文彦」名義でアニメ「マジンガーZ」や特撮作品「科学戦隊ダイナマン」のテーマ曲の作詞も担当。マルチに活躍した。

 後進の育成にも積極的で、77年に設立した「小池一夫劇画村塾」から、ドラゴンクエストシリーズの生みの親でゲームデザイナーの堀井雄二氏(65)や漫画家・板垣恵介氏(62)、山口貴由氏(52)らを育てた。

 ◆小池 一夫(こいけ・かずお、本名俵谷星舟=たわらや・せいしゅう)1936年(昭11)5月8日生まれ、秋田県出身。00年に大阪芸術大の教授になり、キャラクター造形学科を開設、同学科長を務めた。神奈川工科大情報メディア学科教授、大阪エンタテインメントデザイン専門学校教授を歴任。1メートル83、血液型B。

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