芸人から“殺気”が消えた理由 大物P・小松純也氏が語る平成芸能界の変化「淘汰少なくなった」

[ 2019年2月23日 09:00 ]

数々の人気番組を手掛けてきた小松純也氏は映像エンターテインメントの将来性を語る
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 ゲストが語る「人生最高の一品」を通じて、その素顔や魅力に迫るTBSの新感覚グルメ・トークバラエティー「人生最高レストラン」(土曜後11・30)が23日、節目の放送100回目を迎える。昨年12月8日の放送では深夜帯ながら平均8・0%の高視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークした同番組のチーフプロデューサー・小松純也氏は、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)、「ドキュメンタル」(Amazonプライムビデオ)なども手掛けるヒットメーカー。1990年にフジテレビ入社後、平成の時代のほとんどをテレビ業界の第一線で活躍してきた小松氏に今後の映像エンターテインメントの可能性について聞いた。

 小松氏は90年代から「ダウンタウンのごっつええ感じ」「笑う犬」「笑っていいとも!」「SMAP×SMAP」「ホンマでっか!?TV」など、フジテレビの人気番組に数多く携わってきた。「出会った順番で言わせていただくと、ダウンタウンさん、ウッチャンナンチャンさん、タモリさん、鶴瓶さん、さんまさん、SMAP。強烈な人とばかりやって影響を受けてきました」と笑い、「『出演する番組は自分の作品だ』という意識で、自分を自分でプロデュースする方ばかりと仕事をしてきました。彼らは出演者ではありますが、クリエイターでもある。そういう方たちに鍛えられたという自負はあります」と語る。

 第一線で「身に染みて感じている」というテレビ業界の変化―。「僕が向き合ってきた方たちは天下を取るか、取らないかという“殺気”に満ちていた。もちろん“殺気”がないけどすごい方もいらっしゃったんですが、(90年代の)芸能界は椅子取りゲームで天下を取った人が生き残って、同世代の他の方はいなくなるという仕組みでした」。それから、番組の作り方が変わっていく中で、「1人のテレビスターというより、芸人さんの塊がテレビの中での主要なツール、構成要素に」なっていった。「体1つで勝負する彼らがどれほど大変かは分かっていますので、芸人さんにとってはとても良い変化だと思います」と前置きした上で、「業界全体の淘汰が少なくなって、ほどほどのポジションでほどほどの役割を果たす人たちに活躍の場が与えられるようになったと感じます。だから、『No.1になりたい!』という気迫を垣間見る方が少なくなったのかな」と芸人の意識の変化を分析する。

 昨今ささやかれている“テレビ離れ”については、「ネット配信・ゲーム含めて映像エンターテインメントに人が接する時間は減少したわけではないと思う」と持論。「ネットが普及したことで視聴者との双方向的な番組は作りやすくなりましたし、映像表現の幅はむしろ広がっていますので、作る側の意識としては逆に(環境は)良くなっていると思います」とし、「地上波のテレビマンとして言わせていただくと、地上波にも素晴らしいところがある。チャンネルを回さないと何の番組がやっているか分からない偶然の部分があって、偶然の出会いは人間にとって必要なもの。若い方がたまたま健康番組を見て、がんにまつわる情報を知ることもいいことなのではないでしょうか」と地上波の魅力を力説する。

 小松氏は“受動視聴”が想定される地上波の番組だけでなく、 “積極視聴”ユーザー向けの配信映像の分野でも、「ドキュメンタル」などの人気作品を手掛けているが、「最近では視聴者の皆さんのスタンスが地上波と同じになってきている」と感じているという。「レビューを見ていると、『危ないことをしていて笑えない』という書き込みがありました。もちろん、ご覧になって楽しめなかったという点は大変申し訳ないのですが、一方で、危ないことをするとしても、私たちは出演者に絶対にケガをさせてはいけないという思いを当然、見る方よりも強く抱いています。安全に関するシミュレーションは散々しているんですけど、あえてそれを見せません。そうでなければハラハラしないので。一般社会のモラルと、エンターテインメントの中での“ルール”は根本では同じでありながら異なるもの。現実とエンタメの世界には“ルール”の違いがあるのだと理解していただけるよう、作り手側は視聴者との間に信頼関係を構築していかなければならないと思います。地上波にしろ、配信映像にしろ、(作り手と視聴者が)お互いの節度と信頼を深めて、お互いに懐が深くなると映像表現の幅はさらに広がると思います」と映像エンターテインメントが持つさらなる可能性を強調した。

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2019年2月23日のニュース