米国の映画館で珍現象 音を出すのが恐ろしいホラー映画…ポップコーンを残す観客が続出

[ 2018年10月25日 09:30 ]

映画「クワイエット・プレイス」出演のエミリー・ブラント(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
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 日本ではホラー映画の公開といえば夏休みが定番だったが、最近、この傾向に変化が見られる。10月31日の「ハロウィーン」が日本でも定着したことで、このイベントに合わせ9月から10月にかけて公開される作品が増えてきた。今年は人気の死霊館シリーズ最新作「死霊館のシスター」が9月21日、全米で想定外の大ヒットとなった「クワイエット・プレイス」が同28日に封切られた。

 「死霊館のシスター」は、お化け屋敷的な怖がらせ方はシリーズ随一とも言われ、ファンの心をがっちりつかんでいる。一方の「クワイエット・プレイス」。こちらの評判もすこぶるいい。配給関係者は「日本でも予想を上回るヒットになっています。シリーズものでもない、有名スターも出ていない。作品の力です。とにかく背筋が凍るほど怖い作品なので」と話す。

 設定は、こうだ。荒廃した近未来世界で暮らすある一家。音を立てると“恐ろしい何か”がものすごいスピードで現れ、襲われる。言葉すら話せない。会話は手話。こんな状況下で、妻が妊娠。夫は妻を、子供たちを守れるのか――。

 ホラー映画は、緊張した場面で「ガタン!」と大きな音が出て、観客が椅子から飛び上がるのが“お約束”。でも通常は全編を通じて2、3回。「クワイエット・プレイス」はこの緊張感が終始続くのだ。せき払いするのも恐ろしく感じるほど。見る側も、とにかく「音をたてられない」という強迫観念にとらわれてしまうのだ。

 全米でも「クワイエット・プレイス」の上映館で、ある珍現象が発生した。米国人はホラー映画でもポップコーンを食べながら楽しむ。それでもこの映画ばかりは、観客が登場人物に同化。「ポップコーンをかじる、あの“フニャ”というわずかな音にさえ気を使ったようで、上映終了後、半分も食べていないポップコーンのカップが次々と回収されました」と配給関係者。劇場のポップコーンの売り上げにまで影響が出たという。

 ただ、声も出ない……というだけで終わっていないのが、この映画のすごいところ。父親とは、母親とはどうあるべきかという質問を観客に突きつける。クライマックスで映し出される究極の家族愛。恐ろしさの果てに、涙する観客が続出している。

 全米では興行収入が200億円を突破し、低コスト製作費の作品としては近年まれにみる特大ヒット。続編が2020年5月に公開されることも決定。あのラストシーンからどのようなストーリーになるのか。公開を静かに待ちたい。

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2018年10月25日のニュース