遠藤憲一が目指す“究極の芝居”「まだ全然」現状に安住せず

[ 2016年11月10日 08:00 ]

遠藤憲一インタビュー(下)

「ドクターX」にゲスト出演する遠藤憲一。演技に目覚めた原点と、目標とする“究極の芝居”を明かした(C)テレビ朝日

 俳優の遠藤憲一(55)がテレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」(木曜後9・00)の第5話(10日放送)と第6話(17日放送)にゲスト出演する。「御意!」のセリフでおなじみの海老名敬を好演し、シリーズ第2弾からレギュラー出演。今回はスポット参戦になるが「コワモテなのに情けない役がドラマやCMでも増えるようになったのは、間違いなく海老名が始まりだったと思います」と自身の幅が広がった作品と役柄に感謝する。当代随一の名バイプレーヤーの1人。演技に目覚めた原点と、目標とする“究極の芝居”を明かした。

◆得意なことがなかった…俳優は「ずっとやるとは決めていました」

 子どもの頃の夢は野球選手。俳優の道に進んだのは高校中退後、アルバイトをする中でタレント養成所の募集広告が目に留まったのがきっかけだった。「アルバイトをコロコロ替わっていたので、募集広告に敏感で。『へぇ~、こういうのもあるんだ』と試しにやってみたのが始まりでした」。この世界に入るとは「全く思っていなかったです」

 タレント養成所の中にあった劇団の公演に出演してから「芝居がおもしろくなりました。演劇に触れて“人間をつくる”ことにすごく興味を持つようになって。子どもの頃は野球好きだったんですが、以来ずっと好きと思えるものがなかった。芝居に対して『好き!おもしろい!』と思えたのが一番大きかったですかね」と振り返った。

 演出家に勧められた読書、美大に通う先輩が撮る写真など、さまざまな芸術・文化を「一切合切、吸収していくことがおもしろくなって。どうやって演劇に結び付いていくのかは分からなかったですが、そういうものに触れて、プラスアルファして、ものを作るということが楽しくなったんじゃないですかね。手先で作れるものがあったら、そっちをやっていたかもしれない。大もとは『作る』ということが好きだったんだと思うんです。これならやれるかもしれないと思ったんじゃないですかね」

 「普通に演じられるようになるまで数年かかった」というが「(俳優を)ずっとやるとは決めていました。ほかに見つからなかったから。得意なことが1個でもあったら、変わっていたかもしれないですが、本当に何にもできないんで。むしろ、それがよかったのかなと思って。続けるにはね」

◆セリフのない普通の場面で人を引き込めるか「今そんな力量はない」

 1990年代後半からVシネマやカルト映画に数多く出演し、ブレーク。今やテレビでも欠かせない存在に。今年も1月クール「お義父さんと呼ばせて」、7月クール「HOPE」、10月クール「Chef~三ツ星の給食~」と出ずっぱり。1年間通してNHK大河ドラマ「真田丸」も並行した。この間、単発ドラマや映画、ナレーションの仕事もひっきりなしだった。

 自身の“現在地”について聞くと「仕事量は多くなったのかもしれないですが、まだまだです。まだ全然。まだですね」と「まだ」を繰り返した。主演もこなす名脇役の地位を築きながら、現状に安住しない。何が足りないのか。「うーん、難しいな。どう言ったらいいのかな」と思案し「もっと素のまんまで、人に見せ得るところまで到達するのは、ものすごく大変なことなんですが、それがまだできていない。これ、一生のうちにできるかできないか、分からないです。例えばセリフが何もなく、普通の状態の場面を演じて、ちゃんと人が見たいと思うような芝居になるのかと言ったら、到底、今そんな力量はない。役作りも何もせず、そこにいるだけで、人がグワーッとのめり込んで見れちゃう芝居。そこが一番目指したいところですが、そんなことは到底できない」と目標とする“究極の演技”を明かした。

 もはや、それが演技と言えるのかさえも分からない“超自然体”の芝居。一例を尋ねると、名優・佐分利信さん(1982年没、享年73)の晩年の代表作、NHK「阿修羅のごとく」(79、80年)の父親役を挙げた。「人間もキャラも違うので、佐分利さんを目指しているということではありませんが、もう存在だけ。普通のお父さんなのに、見入ってしまいます」。35年以上に及ぶキャリアを誇り、当代きっての名バイプレーヤーになった遠藤は今も、さらなる高みに挑み続ける。

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