小島慶子 豪州移住1年半「2人分の人生を生きているみたい」

[ 2015年6月28日 11:50 ]

豪で家族と充実した生活を送る小島慶子。視界の先に広大な世界が広がっている

 テレビタレント、ラジオパーソナリティー、文筆業とマルチに活躍する小島慶子(42)。元TBSの花形アナウンサーは、現在、家族とともにオーストラリアで生活している。何でもこなせる女性の代表のようなイメージ。でも、その生き方は決して平たんな道のりではなかった。

 人生何が起きても不思議じゃないのよ、一度はどこかで聞いたことがあるフレーズ。この人もきっとこんな心境だったのだろうか。

 オーストラリアのパースに引っ越して約1年半が過ぎた。そのきっかけとなったのは、テレビ番組制作会社でディレクターをしていた夫(50)の「俺、仕事辞めようと思ってるんだ」のひと言だった。

 「驚きましたよ。まさかそんなことを言われるなんて考えてもいませんでしたから。ちょうど彼が50歳目前。男の人ってその年代になると、そういう気持ちにもなるのかなぁなんて」

 結婚14年目のパートナーの突然の“充電宣言”。当初、困惑もあったが、その時、10年4月に自身がTBSを退社した時のことが頭に浮かんだ。「そういえば、一番応援してくれたのは彼だったな」。そこからが彼女らしい。「せっかくだから仕事をしてたらできないことをしよう」と海外移住を提案。中学生の長男、小学生の次男を連れて新生活をスタートした。

 かつて父親の仕事で3歳まで住んだことのある、豪州の西側に位置するこの地は、「世界で最も美しい都市」とも言われる。街から車で走ると、すぐにインド洋に面した白砂のビーチ、ペンギンが棲息する島などもあるまさに自然の宝庫。

 「子供を育てるには本当にいいところ。みんなで地球って素晴らしい星なんだねって、時間の許す限りいろいろなスポットを巡ってます。今は家族で過ごすのが一番楽しい」

 掛け替えのないファミリーとの時間。そのために仕事は常にべストを尽くす。東京で1カ月、さまざまなオファーをこなし、我が家へ帰ってリフレッシュ。日本との時差はわずか1時間だが、距離は南へ約8000キロ。季節は反対で今は枯れ葉舞う冬の始まり。

 「不思議ですね。日本の空港では皆さんから声を掛けていただくのに、向こうに行っちゃうと誰も知りません。ただの英語が苦手な東洋人のおばちゃん。まるで2人分の人生を同時に生きているみたい」

 笑顔が素敵なワーキングママ。柔和な表情から公私にわたる充実ぶりがうかがえた。

 目鼻立ちハッキリのスラリとした美人。さぞや華やかな青春時代を謳歌(おうか)してきたのだろう。本人いわく「残念ながら全く違いましたね」。その意外な理由を楽しそうに話しだした。

 「私の10代後半は、いわゆる渋カジ世代。オシャレで洗練された雰囲気で、こなれた感じの女の子がはやってたんですね。私みたいなくどい顔で大柄な女の時代じゃなかったんですよ」

 過ぎたるは猶(なお)及ばざるがごとし!?それは今でも同じだという。彼女の印象は決して癒やし系とはいえない。どちらかといえば、何事にも妥協を許さずパーフェクトを求める強い女性。

 「そうでしょう。そう言う顔なんですよ。私だって本当は“ふなっしー”のようなほんわかした顔に生まれたかったんですから」

 憧れの職業、アナウンサーになりたいと思ったのは、高校1年の時。テレビっ子で当初はNHKの硬派な番組の作り手を夢見ていたが、フジテレビの“女子アナブーム”に影響されて、「こっちも楽しそう」と方向転換。念願かなってTBSに入り、局アナとして15年間勤務した。その間、注目度が高いだけに、経験者にしか分からない苦労もあった。

 「人それぞれでしょうけど、組織の一員としてちゃんと仕事をして会社に貢献しなくちゃいけないという思いと、一個人の出演者として人気者になりたいという気持ちの板挟みです。そのはざまで心がいつも揺れてるんですよね」

 15歳から30歳までの母親との確執は、自ら本にも著した有名な話。「理想の娘像」を掲げ、言葉遣い、立ち居振る舞い、進学先や交友関係、結婚相手まで事細かに干渉してくる母親の言動に、心身ともに拒否反応。食べては吐くを繰り返す摂食障害、不安障害に苦しんだ。

 「結婚して自分で2人の子育てをするうちに大きく気持ちが変化しました。今では母に教えてもらったことが自分の財産になってますし、何よりも一人の女性同士として向き合えるようになりました」

 社会が複雑化し家族の在り方が問われる時代になった。家庭の中でも個々を十分に尊重することが肝要。そのことを誰よりもよく理解している人だと思う。

 ◆小島 慶子(こじま・けいこ)1972年(昭47)7月27日、オーストラリア生まれの42歳。95年、学習院大学法学部卒業、TBSに入社。アナウンサーとして活躍、99年にはギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。テレビ局を舞台に女子アナたちの嫉妬と野心を描いた初の小説「わたしの神様」(幻冬舎)を販売中。

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