八代亜紀 NY名門ジャズクラブで「雨の慕情」、万感「夢のよう」

[ 2013年3月29日 06:00 ]

27日、米ニューヨークの名門ジャズクラブ「バードランド」での初ライブで、ヘレン・メリル(左)と共演する八代亜紀

 演歌歌手の八代亜紀(62)が27日(日本時間28日)、米ニューヨークの名門ジャズクラブ「バードランド」で初ライブを行った。ジャズを初めて聴いた小学5年の頃から夢見た舞台。米ジャズ界の最高齢女性歌手ヘレン・メリル(82)との共演も果たし「夢のような一日です」と万感の表情。ニューヨーカーたちからの拍手が鳴りやまなかった。

 「いつか本場のジャズクラブで歌いたい」と夢見て約50年。最も好きな色の青いスパンコールドレスを着て、1曲目「雨の慕情」をジャズ調のアレンジで披露。歌い終えると「グッドイブニング!アイムソーハッピー、ハッピー、ハッピー!」と声を弾ませた。英語でのあいさつは42年の歌手人生で初めて。「舟唄」は演歌のまま歌った。

 全12曲の中でも、この日一番客席を沸かせたのが大御所とのデュエット。ジャズを音楽の原点とする八代にとって、メリルは15歳の頃に歌声を聴いてから常に憧れの存在だった。メリルの代表曲「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」と、八代の故郷の熊本民謡「五木の子守唄」を一緒に歌うと、八代は「夢のような一日です」と瞳を輝かせた。メリルも「アリガトウ。(八代の歌声は)とてもビューティフル」と称えた。

 公演前には対談し、ジャズで大切なことも教わった。「フリーダムよ。精神的に自由でありなさい。ポップとは違う形で世界中の心を一つにまとめることができるのよ」。この言葉は刺激になったようで「宝物ですね。ヘレンと同じ82歳まで歌い続けます」と約束した。

 終演後、バードランドのオーナーに「今度は1週間公演をやってほしい」と認められ、店内の壁にライブ写真が飾られることも決定。「一緒のステージに立ったミュージシャンと自由にステージを作り上げることができてジャズの素晴らしさを感じた。日本に帰ったらみんなに自慢したい」。感無量の様子で大成功をアピールする笑顔は、少女のように初々しかった。

 ▽バードランド 1949年、ブロードウェーで創業。ブルーノート、ヴィレッジ・ヴァンガードに並ぶ名門として、50年代にはチャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィスらが出演。65年に一度閉店、86年に場所を移して営業再開。店名はパーカーの愛称「バード」にちなんだ。

 ◆ヘレン・メリル 1930年7月21日、米ニューヨーク生まれ。50年代から活動。ハスキーな歌声は「ニューヨークのためいき」と呼ばれる。66年、UPI通信社のアジア総局長と結婚。日本に一時移住し、72年まで滞在。大の親日家で日本語を話せ、ひらがなも読める。

 ≪NHKで軌跡を放送≫この公演までの軌跡を追ったドキュメンタリー番組が4月29日午後10時からNHK総合で放送される。昨年8月から約7カ月間、密着。ジャズへの憧れや本番に向けて期待と不安が入り交じる姿などが紹介される。

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