還暦過ぎて世界挑戦…由紀さおりがグランプリ受賞

[ 2012年8月30日 06:00 ]

<スポニチ文化芸術大賞>グランプリに輝いた由紀さおり

第20回スポニチ文化芸術大賞 グランプリ

 映画、放送、音楽、舞台、スポーツなど、多彩なジャンルで活躍する人・団体、作品を本紙が友情と共感を込めて表彰する「第20回スポニチ文化芸術大賞」の受賞者が29日、決まった。グランプリは、アルバム「1969」が世界的にヒットした歌手・由紀さおり(63)。優秀賞は、腹話術のいっこく堂(49)、NHKの番組「キッチンが走る!」が選ばれた。特別賞は、作詞家の秋元康さん(54)と落語家の故立川談志さん。贈賞式は9月24日、東京都文京区の東京ドームホテルで行われる。

 米国のジャズオーケストラ「ピンク・マルティーニ」とのアルバム「1969」を世界各国でヒットさせ、日本の歌謡曲の魅力を世界に広めた。

 「最初の火付け役がスポニチさんで。素敵な賞まで頂けて本当に光栄ですわ」。いきつけの都内の焼き肉店で受賞を伝えると、いつものあでやかな笑顔がはじけた。

 本紙が英ロイヤル・アルバート・ホールでの由紀の成功を報じたのが昨年10月。これをきっかけに歌謡曲での海外挑戦が広く伝わり、国内では41年ぶりにオリコンチャートにトップ10入り。アルバムは世界30カ国で発売され、ヒットした。

 この文化芸術大賞とは縁が深い。96年(第4回)に姉の安田祥子との童謡コンサートで、98年(第6回)にNHK「コメディーお江戸でござる」の出演陣として優秀賞を受賞。「3回受賞した人はいないでしょう。贈賞式当日はどうなさるの?歌った方がいい?」の反応は、勝手知ったる“最多受賞者”ならではだ。

 世界での快挙は、その才能はもちろん“肉食系女子”と呼ぶべき行動力と情熱に負うところが大きい。今回のコラボはプロデューサーからの提案。しかし、世界で活躍する多忙な音楽家との共演企画は容易には進まず、由紀が「私が自分で行ってくる」と彼らの本拠地の米ポートランドへ飛んで行き、直接打ち合わせをした。

 「今の日本の音楽界からは歌謡曲の存在がすっぽりと消えている。何とか復活させたい、21世紀の歌謡曲を作りたいという思いと、年齢的にもこのチャンスを逃したらもうないという必死さが全てを突き動かした気がする」という。

 還暦を過ぎて世界を目指す――。由紀によってそれは奇跡ではなくなった。日本語の歌謡曲が世界に響き渡った功績もさる事ながら、60歳の定年後にもチャンスはあり、夢は若者だけにあるんじゃないと教えてくれたことに感謝したい。

 ◆由紀 さおり(ゆき・さおり、本名安田章子=やすだ・あきこ)1948年(昭23)11月13日、群馬県桐生市生まれの63歳。幼いころから姉・安田祥子とともに童謡歌手として活躍。69年のソロ曲「夜明けのスキャット」ヒット後、ドラマやバラエティー番組などに数多く出演。85年ごろから、姉・祥子と童謡コンサートを再開。

 ◇選考委員 秋元康(作詞家)鴨下信一(演出家)小西良太郎(音楽評論家)崔洋一(映画監督)高野悦子(岩波ホール総支配人)林あまり(歌人)矢野誠一(演芸・演劇評論家)山藤章二(イラストレーター)手島大治(編集局長=選考委員長)木村隆(編集局特別編集委員)宮嶋極(編集局文化社会部長) =敬称略=

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2012年8月30日のニュース