緒形拳さん偲ぶ会…奥田瑛二が“幻の映画”構想

[ 2009年2月7日 06:00 ]

緒形拳さんをしのぶ会で、遺影を前にあいさつする映画監督で俳優の奥田瑛二

 昨年10月5日に肝がんによる肝臓破裂のため、71歳で死去した俳優の緒形拳(おがた・けん、本名明伸=あきのぶ)さんを偲(しの)ぶ会が6日、都内のホテルで行われた。06年の主演映画「長い散歩」の監督で俳優の奥田瑛二(58)が、友人代表として「おくる言葉」を朗読。緒形さん主演の新作映画が、クランクイン直前まで進行していたことを明かした。

 「たまたま緒形さんがげたを履いて散歩に出掛けたと思っています。3年前“長い散歩”で、どうしても緒形さんでなければとお願いしました。もう一本、企画を立てて話したけれど、今生にはかないませんでした」
 2002年に宣伝用に撮影され、本人も気に入っていたという遺影を見上げ、奥田は650人の参列者を前に静かに話した。題名やストーリー、役どころについては「それはお話しできません」と言葉にすることはなかったが、緒形さんが演じることを想定して書いたオリジナル作品という。
 昨年6月にクランクインする予定で話が進み、具体的なスケジュールも固まっていた。しかしその直前、緒形さんから「もう少し体を動かさなくてもいいように変更できないか」と連絡があった。「それはできません」と伝えると、「じゃあ、一回流そうか(見送ろうか)」と申し出があったという。
 映画の撮影がなくなりスケジュールが空いたことで、2人は緒形さんの遺作となってしまったフジテレビ「風のガーデン」に出演。「弱っていくのが誰の目にも明らかだった」と、緒形さんの体力が限界に近かったことを明かした。奥田の元には、幻となってしまった映画の台本が50冊あり「10年後、僕が主演します。ほかの人にはさせられない」と力を込めた。
 緒形さんに最後に会ったのは亡くなる2日前。死去の7時間前には、長女で映画監督の安藤桃子のもとにメールを送ってきたことも明かした。名作を残して逝った大先輩に、奥田は「人って死んでも生きるんですね。凄い人です」と感嘆の声を上げた。
 会の最後には遺族を代表し、次男で俳優の緒形直人(41)があいさつ。「父はやり残した仕事、挑戦したい役がまだありました。無念な思いを僕たち兄弟の中に生かし続け、上を向いて進んで行くつもりです」と、目に涙を浮かべ兄の幹太(42)と深々と頭を下げた。

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2009年2月7日のニュース