楽天・今江監督 “居酒屋で見せた精神”こそが 逆風を追い風に変える

[ 2023年12月13日 08:00 ]

楽天新入団選手発表会見で期待を口にする今江監督
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 出張先の仙台市内で、ある居酒屋に初めて入った。定宿としているホテルの近く。幾度となく店の前を通り過ぎていた。この日も通過するつもりが、何気なく中をのぞくと店主と思わしき男性が楽天のユニホーム姿でカウンターの中に立っていたことで「入ってみるか」と思った。

 カウンターに座って気仙沼で水揚げされた新鮮な刺身に舌鼓を打っていると、隣に座っていた常連客とみられる男性と店主の会話が耳に入ってきた。

 常連客「ファン感謝祭に行ってきてきたんだよ。今年は人がいっぱいで盛り上がってたわ。今江監督も遠目からだけど見れたんだ」

 店主「実は、何日か前に今江監督が店に来てくれて。気づいた人たちがサインや写真をお願いしても笑顔で応じていて。うちも店として“申し訳ないな”と思ったんだけど、気さくにファンに接している姿を見るとさらに応援したくなったよ」

 常連客「マジで?俺も近くで見たかったわ~。現役の時から好きだったんだよ。やっぱり笑顔が良いよな!来年は球場に行って応援してやんねえと」

 聞こえてくるやりとりに、担当記者としてうれしくなった。こういった声が応援の輪を広げ、地域に根ざしていくきっかけになるのではないだろうか。

 11月23日のファン感謝祭には球団創設以来最多の2万3753人が来場した。その2日後、安楽智大投手(27)の「パワーハラスメント問題」が報じられた。ファンの人たちがどれほど心を痛めたことか。記者もシーズン中、気になる行動を見かけた。練習開始前、靴下に小さな穴が開いていた後輩選手を激しく叱責。さらに穴に指を突っ込んで靴下をビリビリに引き裂き「お前、そんなソックス履いてて子供たちに夢とか希望を与えられると思ってんのか!何考とんねん!」と声を荒げていた。フェンス越しでもはっきりと聞き取れるほど大きな声で。

 今江監督は就任してすぐに「パワハラ問題」という逆風にさらされた。「ファンサービスの充実」と「応援されるチームづくり」を掲げ、選手たちには「野球で結果だけ出してファンがついてくる選手なんてごく一部。お金を出してファンのみなさんが球場にきてくれる。ファンサービスもその選手の価値になる」と訓示していただけに、ショックの大きさは計り知れない。

 信頼がなくなるのは一瞬。回復には時間がかかる。安楽投手が自由契約になって終わりではない。ただ、全員が覚を持って行動すれば、チームに向けられる目は必ず変わるはずだ。先頭に立つ若き指揮官には、逆風を追い風に変えるだけの力があると信じている。(記者コラム・重光 晋太郎)

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