【内田雅也の追球】1点差試合は阪神がリーグ最高勝率 監督は手応え、選手には自信が

[ 2023年8月7日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3-2DeNA ( 2023年8月6日    横浜 )

<D・神> 岡田監督(右)とハイタッチをかわす島本(左は伊藤将)(影・大森 寛明)
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 阪神監督・岡田彰布は決して口には出さないが「強くなったな」とチームの成長に手応えを感じている。特に接戦で終盤を迎えたときの勝負強さを感じている。

 強力な救援投手陣がその支えとなっている。それでも岡田は「万全とは思っていない。オレの中にはJFKが基準にある」と漏らしたことがある。2005年優勝当時のジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之だ。「あの頃は6回までリードしていれば、考える必要はなかったからな」

 今はJFKのような、決まった必勝継投のパターンがあるわけではない。クローザーの岩崎優につなぐまでは多くの救援投手をやりくりしながら勝ちを拾っている。

 この日は6回まで先発・伊藤将司が1点リードで踏ん張り、7回以降は救援陣がしのいだ。

 ただし、内容は綱渡りのようだった。7回裏に起用した浜地真澄が安打と自らのバント処理悪送球で無死二、三塁を招いた。桑原将志を空振り三振にとって1死。ここで起用した左腕・島本浩也の投球が圧巻だった。楠本泰史を遊飛、関根大気を空振り三振に切って無失点でしのいだのだ。

 島本は今回の3連戦初戦(4日)にも8回裏2死満塁で登板し、佐野恵太を空振り三振に切っている。ピンチにも動じずに腕を目いっぱい振る強心臓には恐れ入る。岡田も「島本は度胸よ」とたたえていた。

 8回裏もカイル・ケラーが安打、暴投、四球と無死一、二塁を招いたが、後続を断った。自作自演のピンチ脱出だったが、同点を許さなかった。

 9回裏はしのつく雨のなか、岩崎が締めくくったのである。

 V9巨人で監督・川上哲治を支えた名参謀、牧野茂が常勝チームをつくった秘けつを「勝った時の特徴を拾い出して選手に覚え込ませる」と語っている。「なぜ勝てたのか」という勝利ミーティングを開いていた。労働省(現厚生労働省)広報室編『労働時報』1980年3月号にあった。

 「すると、この形になるとオレたちは勝つ、という自信がでてきます。ぼくらは“1点を争う試合は絶対に負けない”が信念でした」

 今季の阪神はこれで1点差試合リーグ最高勝率・708の17勝7敗となった。岡田は手応えを、選手たちには自信が芽生えていることだろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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