栗山英樹氏 令和に読み解く根本陸夫さんの言葉「迷ったら歴史を学べ!」

[ 2023年6月27日 06:00 ]

栗山英樹氏
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 【栗山英樹 帰ってきた熱中先生】WBCの世界一から3カ月。ユニホームを脱いだ今、度々思い出す言葉がある。「球界の寝業師」と言われた故根本陸夫さんが残した言葉だ。根本さんは球界に方向性の多様化を示し、多くの発想を現実にし、球界発展に大きく貢献された。そんな偉大な野球人がこう言っていた。

 「どの方向性に進むのか、迷ったら歴史を学べ!」――。

 確かに、歴史を読み込んでいくと「こう手を打ったら、こういう結果になった」ということが繰り返されてきたのが分かる。ある意味、科学と一緒で実験―検証の繰り返し。監督として最終的に采配の根拠は、己にしか分からない。というよりも常に「こうしたら、こう!」と実験―検証をしてるわけだ。それを考えると、監督という立場ほどあれだけ野球を学べる場所もないということになる。

 12年ぶりに客観的に野球を、世の中を見ていると多くの疑問が湧いてくる。みんなが考えていることと、全く違う方向に進むことが多々ある。コロナはもちろん、世界を引っ張った日本経済の足踏み、さらにはこの時代に戦争まで起こるとは思っていなかった。

 野球もそうだ。十数年前、今後は必ず打者優位の時代になると言われた。打者は打撃マシンなどの進化でいくらでも質の高い練習を重ねられるが、投手は生身、やりたいことに限界が生まれる。しかし、現状は全く逆の側面を見せている。

 投手の球速は年々上がり、変化球もレベルアップし、投手の進化の方が勝った状態になっている。科学的な知見から、体の動きやボールの動きが解明されることで進化することは多い。ただ、これまでと全く違った方向になった例もある。かつて誰もが言った「バットは上から叩け」(ダウンスイング)は、今は「下から」という表現も生まれてる。

 だから今の時代「この選手には、これが正しい」と単純に言えるものは本当に少ない。ということは、野球にはまだまだやり方や誰もやらなかった方法がたくさんあるのではないか。そんなことを今、感じている。根本さんが言われた「歴史の流れ」を、もう一度深く読み解きたい。(前侍ジャパン監督)

 ▽熱中先生 92年5月12日付スポニチ紙面から連載がスタート。日本ハムの監督就任に伴い、11年12月29日付紙面をもって一時休載となるまで746回掲載。「帰ってきた熱中先生」は5月16日付紙面で第1回が掲載されており、今回が748回目となる。

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