ソフトバンク・上林復活の鍵は「審判員泣かせ」のファウル

[ 2022年2月28日 07:45 ]

26日のオープン戦で右越え2ランを放った上林(撮影・中村 達也)
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 NPB審判員のボール袋には6個の試合球が入っている。ファウルや投球のワンバウンドのたびにボールを交換。残り1球になるとベンチ横のボールボーイやボールガールに「次、ボールを持ってきて」と補充のサインを送る。11年から16年までNPB審判員を務めた記者は、そんな「ボール交換」をソフトバンクの宮崎キャンプで思い出した。

 何度も補充するイニングもあれば、1度も補充せず攻守交代になることもある。試合を円滑に進行するためには、ボールを補充する回数は少ない方が望ましい。その中で、ファウルを連発する打者は審判員泣かせだ。私の審判員時代、特にファウルが多かったと記憶しているのが、ソフトバンク・上林だ。

 打つポイントを前にしていた当時の上林は引っ張りのファウルが多かった。初球から積極的にスイングして一塁線に強烈なファウルを連発。「前さばき」の上林が打席に入ると、私のボール袋はあっという間に軽くなった。

 上林は16年にウエスタン・リーグで12本塁打を放つと、翌年の17年には1軍に定着。5年目の18年は打率・270、22本塁打で外野のレギュラーとして活躍した。潜在能力が開花したかに思えたが、19年以降は3季連続で打率1割台。昨季は出場39試合で打率・191、2本塁打、11打点と低迷した。

 打撃不振の原因は打つポイントを体に近づけすぎたことだった。今キャンプで藤本監督は「ここ3年間、悩みまくっている。元に戻して“ポイント前”です」と上林に原点回帰を勧めた。指揮官から直接指導を受けた上林は「自分のポイントで打った時はスピードが変わる。前で捉えた方がヒットになっている確率は高い」と手応えを語った。

 26日にオリックスとのオープン戦でチーム1号の右越え2ランを放った上林。低めを「ポイント前」で捉えた一撃だった。復活を目指す今季、打席では快打の兆候となる「審判員泣かせ」のファウルが出るか、注目したい。(記者コラム・柳内 遼平)

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2022年2月28日のニュース