新井貴浩氏 「教育者」としての学生指導は覚悟が必要

[ 2021年1月5日 06:00 ]

新井貴浩氏
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 【新井さんが行く!】例年とは違う年末年始。先月下旬から学生野球資格の回復のため研修に参加してきた。コロナ禍を考慮し、一カ所に集まるのではなく、全てオンラインでの受講。プロ側の講習は既にクリアし、近く始まるアマ側の講習を終えれば、必要な研修は完了する。

 高校生の長男が野球をやっていて、今年4月から2年生。一歩も二歩もひいたところから見守ることは変わらないけど、求められれば技術的なアドバイスもできるようになる。

 この制度が確立されたのは、ちょうど日本プロ野球選手会の会長をやっていた頃だ。在任期間中の出来事だったのは、本当にたまたまでしかない。古田敦也さん、宮本慎也さんら歴代会長、選手会のスタッフ、多くの選手たちによる地道な取り組みの成果だから。6年前に亡くなられた前事務局長の松原徹さんの悲願でもあった。現役引退から2年。今回参加する立場になって感慨深い。
 先月上旬にはイチローさんが智弁和歌山高を訪れて現役の球児と交流した。子供たちにとっては夢のような時間で、一生の宝物になったと思う。プロとアマの壁、特に高校野球との壁が高かった歴史を思えば、本当に素晴らしい。多くの関係者が長い時間をかけて壁を取り除く努力を重ねてきたのは、こういう景色を思い描いていたのでは。

 気兼ねなく交流できるようになったからこそ、安易に引退後のセカンドキャリアと結びつけてはいけないとも思う。「いい選手」が、みんな「いい指導者」になるとは限らないように「いい指導者」と「いい教育者」も必ずしも等号では結ばれない。特に高校生は心を耕し、人間形成をしていく時期。野球を通して、さまざまなことを学ぶ。「結果」そのものではなく、結果を目指して仲間と一緒に進んでいく「過程」が大切になる。そこでは「指導者」よりも「教育者」の役割が優先されるべきだと思う。

 高い志を持ち、人生を懸けて子供たちに寄り添えるかどうか。相当な覚悟がいる。触れ合うことと、その世界に足を踏み入れることは、全く違う。今回改めて感じた。

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2021年1月5日のニュース