【藤川球児物語(42)】背番号18で新たな挑戦 4580日ぶり先発勝利

[ 2020年12月25日 10:00 ]

16年4月3日、阪神復帰後の初勝利をあげた藤川

 16年のシーズンから藤川球児は阪神に復帰した。背番号は18。監督に就任した金本知憲は「起用法についてはフラットな状態。チームの足りないところをやってくれれば」という表現で先発起用も視野に入れた。

 
 藤川もキャンプインを前に「選手が自分の役割を言うことはおかしい。金本監督のしてほしいことをやるだけ。最高に使いやすい、信頼される選手になるだけ」と置かれた立場を自覚していた。中継ぎ、抑えでは第一人者と誰もが認める存在だが、先発完投が投手として目指す姿という思いはずっと抱き続けてきた。
 
 ペナントレースでのライバルとの直接対決、CSなどでの短期決戦。ここがヤマ場だと気合を入れた決戦で出番がなく終わる経験を何度も味わってきた。中継ぎや抑えが安定することは勝利のために必要だが、すべては先発がしっかりと仕事をしてこそ。これまで培ってきた経験、投球術を先発で試す。それこそが新たな挑戦。背負ったエースナンバーにも気持ちは表れていた。
 
 プロ3年目の梅野隆太郎もこのとき初めて球を受けた。「思ったより前でボールを放していた。手元でギュッと来る。真ん中から高めに来るボールに威力があった」と感想を口にした。首脳陣も選手もチームを離れた3年間で様変わりしていたが、「自分のピッチングに集中して、野球を楽しむことができている」と藤川はキャンプ、オープン戦の間、何度も語っていた。充実していた。
 
 4月3日のDeNA戦(横浜)で待望の復帰星を飾った。先発での復帰2戦目で、2回までに4四死球と制球に苦しみながらも、ツーシームやカーブを交えて、6回2安打無失点。03年9月19日の巨人戦(東京ドーム)以来、4580日ぶりの先発勝利をマークした。金本の誕生日を祝う白星に笑みもこぼれた。
 
 「監督の誕生日に勝てて良かった。みんなが点を取ってくれて、ありがたかった。梅野も本当にいいキャッチャーなんで」。指揮官が唱えた「超変革」を体現した藤川だが、先発としてはこの1勝だけ。チーム事情が起用法を左右していった。 =敬称略=

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2020年12月25日のニュース