MLB公式サイト記者がサイ・ヤング賞予想 好数値並ぶダルビッシュか、終盤好投続けたバウアーか

[ 2020年11月3日 20:40 ]

大リーグ公式サイトのジョーダン・バスティアン記者(本人提供)
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 大リーグは2日(日本時間3日)、各賞の各リーグ最終候補者3人を発表し、ナ・リーグのサイ・ヤング賞にカブスのダルビッシュが入った。バウアー(レッズからFA)、デグロム(メッツ)との争いで、11日(同12日)に発表される。同賞はダルビッシュとバウアーの一騎打ちとみられ、バウアー在籍時のインディアンスを6シーズン担当し、昨季からカブスを担当するMLB公式サイトのジョーダン・バスティアン記者(38)が投票結果を予想した。(取材・奥田秀樹通信員)

 私はデータを重視する。スプレッドシートを使って数字を並べるが、その際、名前は伏せる。好き嫌いなど、偏見が入らないように気をつけるためだ。ベースボール・プロスペクタスに相当する防御率「DESERVED ERA」というデータがある。捕手の能力と守備陣の力を考慮したものだ。ダルビッシュの専属捕手カラティニはフレーミングがうまい。カブスの守備陣も堅く、3投手の中で一番、恩恵を受けていると言える。それゆえ、ダルビッシュの「DESERVED ERA」は3・26で、バウアーの2・89、デグロムの2・66の方に劣る。

 しかし、守備の要素を無視した三振数、四球数、本塁打率だけを鑑みた「FIP(フィールディング・インディペンデント・ピッチング)」で算出すると、ダルビッシュは2・23。デグロムの2・26、バウアーの2・88より優れた数値を叩き出している。守備に助けられているが、守備の要素を考慮せずとも、2人より良い成績を残していることが分かる。

 被本塁打率は9回当たり0・59で、バウアーの1・11、デグロムの0・93より良い数値を残している。K/BB(奪三振÷与四球)も、ダルビッシュは6・64、デグロムは5・78、バウアーは5・88で、ダルビッシュが最も優れている。

 勝利貢献度を示す指標「WIN PROBABILITY ADDED」でもダルビッシュは2・3、バウアーは1・5、デグロムはマイナス1となっていた。WARは、ファングラフス、ベースボール・プロスペクタス、ベースボール・レファレンスと3種類あるが、全部を足し合わせて平均を取ると、ダルビッシュが少し上で2・6、他の2人は2・5だった。だから、もし私に投票権があるならダルビッシュを選ぶ。バウアーをほんの少し上回る。デグロムは投球回数が足りない。ダルビッシュの76に対し、68。短縮シーズンで8イニング差は大きい。162試合なら4試合分だ。

 しかしながら、投票権を持つ30人の記者にはそれぞれに考えがある。防御率や被打率などを中心に考える記者なら、バウアーになるだろう。バウアーはシーズン終盤、プレーオフ争いで厳しい位置にいたレッズで好投を続け、チームをプレーオフ進出に導いた。また、ダルビッシュとバウアーは2度投げ合い、1試合目はダルビッシュ、2試合目はバウアーが投げ勝った。終盤の大事な試合だったため、2試合目の勝利のほうが価値があると考える記者もいる。こういった事情を鑑み、私はバウアーが選出されると予想する。

 ちなみに、人気投票であれば、ダルビッシュに分があるかもしれない。バウアーは自由奔放な発言で一部の人をいら立たせたり、怒らせたりするところがある。ダルビッシュは英語できちんと会見をするし、ツイッターもユーモアのセンスが感じられ、好感度が高い。魅力的な人物だ。もっとも、好感度が投票に影響する記者はほとんどいないと思う。

 2人を取材してきた私としては、両者に受賞してもらいたい。ダルビッシュは19年の後半に復活を果たし、今季は期待されたが、新型コロナウイルスの影響で春季キャンプが中断になり、3カ月間も何もできない状態が続いた。それでもしっかり調整し、サマーキャンプを経て、素晴らしい結果を残した。私は彼の1年半分の頑張りにサイ・ヤング賞をあげたい。バウアーも長年、いろいろと批判されながら、独自のトレーニング方法を練り上げ、自分のやり方を貫き通し、結果を出した。長年のプロセスに賞をあげたい。そう考えている。(MLB公式サイト記者)

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