筒香の代理人が語る来季への期待感「162試合制であれば25~35本塁打は打てる」

[ 2020年10月29日 02:30 ]

ワールドシリーズ第6戦   レイズ1―3ドジャース ( 2020年10月27日    アーリントン )

現役時代のドジャース・アトリー(右)とツーショット写真に収まるウルフ代理人(本人提供)
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 レイズ・筒香嘉智外野手(28)の代理人を務めるワッサーマン・メディア・グループ野球部門代表のジョエル・ウルフ氏(50)が本紙の取材に応じ、筒香のメジャー1年目を代理人の視点から評価した。ポストシーズンで出番が激減した理由や、球団内での評価なども明かし、来季への期待を寄せた。(取材・奥田秀樹通信員)

 ――筒香はポストシーズンで出場機会が激減した。
 「ヨシ(筒香)にとって、レイズでプレーすることはもろ刃の剣(DOUBLE EDGED SWORD)だった。選手層が厚く、相性重視で打線を組むチーム。アロザレーナやマーゴーのような調子の良い選手がいて、結果的に出場機会が少なくなってしまった。ドジャースに左の好投手が多いことも出番を少なくした。一方、1年目からワールドシリーズで戦い、良い経験ができた。ポストシーズン(PS)を戦うことで、トップクラスの投手とも何度も対戦することができた。この経験が来季、彼に素晴らしいシーズンをもたらすと信じている」

 ――新型コロナウイルス感染拡大の影響は。
 「今季は通常のシーズンの約3分の1しかプレーしていない。開幕前のキャンプも2週間だけ。しかも、コロナ禍のために、球場に長時間いることが許されず、十分に練習ができなかった。チャド・モットーヤ打撃コーチが教えてくれ、筒香本人は球場でもっと練習したかったのだが、その時間はもらえない。普段やっているルーティンがこなせず、すべてが急かされた感じで調整しなければならない。また、感染防止のため、長い時間、ホテルや家にとどまっていないといけなかった」

 ――メジャーの環境にもアジャストしなければならなかった。
 「過去にいろいろな例を見てきたが、しばしば大物FA選手が移籍1年目に苦しむ。その理由は野球選手が習慣の生き物(CREATURE OF HABIT)だからだ。いつも通りのルーティンをすることが大事だが環境が変わればそうはいかない。ジェイソン・ジアンビーのヤンキース1年目は良くなかったし、ブライス・ハーパーのフィリーズ1年目、マニー・マチャドのパドレス1年目もうまくいかなかった。大きな契約で自分にプレッシャーをかけてしまう。そして、即結果を出さないとファンやメディアがすぐに批判を始める。ベストの結果を出すには快適な状態でないといけないが、それを手にするまで時間がかかる。どんなFA選手であっても、アジャストの期間が必要になる。それは1カ月のこともあるが、3カ月のことも、1シーズンのことも。あるいは全くだめなときもある。ただ良いチームは、うまく新しい選手を受け入れる。ドジャーズ、レイズ、カブス、ツインズはそうだ。そういうFA選手の大変さをわかっている」

 ――筒香は速い直球を打つのに苦しんだ。
 「実戦で多く直球を見ることが必要だった。メジャーで何年もプレーしている打者は慣れているけど、筒香は初めて。それが2年契約を結んだ理由の一つでもあった。彼がメジャーの投手にアジャストする十分な時間を与えたかった。ところが、コロナ禍で短いシーズンになり、メジャーの速い球に慣れ、どんなアジャストをすればいいか見つけ出すのに十分な時間がなかった。室内ケージでやれることには限りがある。なるべく実戦で生きた球を見ないといけなかった」。

 ――10年前に比べてMLB全体の投手のレベルも上がっている。
 「近年、投手の力はテクノロジーや科学を使って劇的に上がった。球速が上がっただけでなく、回転効率も上がって、ボールは高めにとどまったままライズする。速い球にタイミングを合わせるだけではダメで、ボールの軌道にバットを合わせられなければならない。その上で変化球との緩急差、軌道の違いもある。ただ、98マイル(約158キロ)を打つなんてことはない。複雑な要素がある。そして、これはいくら打撃ケージで練習してもダメで、実戦で学んでいくしかない。かつての好打者チェイス・アトリー、ジェイソン・ジアンビー、フランク・トーマスらも“投手のレベルは上がった”と言っている。特にブルペンの投手陣が違う。ブルペンから出てくる投手は年々レベルが上って、時に先発投手よりも良い投手がいる。そしてその良い投手と1打席しか対戦できない。だから筒香は今季初めて対戦する投手ばかりだった」 

 ――通常の162試合のシーズンなら違う結果になったか。
 「絶対に違っていた。試合の数で言えば今はちょうどオールスターブレイクが終わったところ。これから本領を発揮できる時期だった。ちなみに、今季の短いシーズンに苦しんだ打者は少なからずいる。いわゆるスロースターターと呼ばれるタイプだ。アレナド(ロッキーズ)、バエス(カブス)は、一度も調子に乗れず、ホットになれなかった。でもこれも野球の一部だ。筒香は経験を得れば得るほど良くなるタイプ。メジャーで素晴らしいキャリアを送れる。彼は出塁率が良いし、1打席あたりに投げさせた球の数がリーグ1位の4・578。MVP候補の2位・ラミレス(インディアンス)の4・512を僅差で上回った。だからチームは終盤、筒香を1番で起用しようと考えた。ボールを良く見て、投手に投げさせることができる。レイズのようなチームではとても重要、先発投手を早い回で下ろせるからね」。

 ――レイズ首脳陣は筒香を評価している。
 「筒香は変化球を打つのが抜群にうまい。打席で手を後ろにキープできる方法を知っているからだ。あとは高めの真っ直ぐに慣れるだけだが、それも進んだ。私はフルにプレーすれば打率は・280~・300、25~35本塁打は打てて、打点をたくさん稼げて、上位打線を任すことができると思う。レイズのスタッフたちもそう信じているし、彼とサインできたことを喜んでいる。打撃コーチ、監督、GMみんなが、筒香がフルシーズンならどういう結果になるか、楽しみにしている」

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