【内田雅也の追球】弱い「球際」が浮き彫りとなった4失点 阪神、課題の守備強化のためには……

[ 2020年10月14日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2-4中日 ( 2020年10月13日    ナゴヤドーム )

<中・神(19)>初回無死一塁、京田の打球に飛びつくも僅かに届かず、二塁打としてしまうサンズ(撮影・椎名 航)
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 阪神が失った4点にはすべて拙守が絡んでいた。ミスと断言するのは酷で、厳しい見方かもしれない。いずれも「あと少し」で捕れなかったのだ。

 順にあげる。

 (1)1回裏無死一塁、京田陽太の左翼前飛球に前進したジェリー・サンズだが届かず、ポテン二塁打となって、無死二、三塁。内野陣は深い守備位置となり、二ゴロで1点を献上した。

 (2)さらに1死三塁でダヤン・ビシエドの三塁側ファウル地域後方の邪飛を懸命に追った小幡竜平だが、わずかに捕れず。直後、右中間二塁打を浴び同点を許した。

 (3)3回裏無死一塁。ソイロ・アルモンテのやや詰まった中堅前のライナー性飛球を近本光司は弾き、一塁走者が生還する勝ち越し二塁打となった。

 (4)5回裏2死一塁。ビシエドの左翼線二塁打をサンズが緩慢な処理で一塁走者の生還を許した。

 あと少し……つまり、「球際」の問題である。

 以前も書いたように、この「球際」は巨人V9監督・川上哲治が<わたしの造語>と著書『遺言』(文春文庫)で明かしている。相撲の土俵際をもとに<土壇場ぎりぎりまであきらめない、粘り強いプレーのことである。捕れそうにない球を飛び込んでいって捕って、捕れなければグラブではたき落としてでも食い止めるプロの超美技のことである>。

 気になったのは<捕れなければ――>の下りである。わずかに届かなかったサンズや近本だが、ボールを大きくそらし、二塁打にした。川上のいうように<食い止める>姿勢がいる。この夜で言えば、単打で止めていれば、後の展開は違っていたわけだ。そのためにどうするか。

 ダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)歴代最多12回受賞の名外野手、福本豊(元阪急)が<理にかなう追い方さえ練習しとけば、誰かてうまく守れるようになる>と著書『走らんかい!』(ベースボール・マガジン社新書)に記している。

 福本はコーチ・中田昌宏のノックを受け、落下地点まで最短距離を走る練習を繰り返した。自分が走ったスパイクの跡を見返し<あと一歩で捕れんのは打球を曲線で追うからだ>と学んだ。

 現役時代、本塁打王も獲った中田は打撃コーチだったが、監督・西本幸雄から「生きた打球を覚えさせてやってくれ」と頼まれ、福本専用のノッカーとなったそうだ。

 <下手くそ>を自覚していた福本が経験から言うように、守備はノックでうまくなれるのだ。

 今の阪神コーチ陣もノックはうまい。むろん外野手だけではない。上達に近道はなく、地道な練習の繰り返しだ。今はいないが木浪聖也の遊撃守備はうまくなったではないか。

 失策数リーグ最多(67個)の阪神は失策絡みの失点を示す非自責点(失点から自責点を減じた点数)が52点もある。これもリーグ最多で、首位巨人は19点しかない。

 さらに、この日のように、記録に表れないミスも相当ある。来季に向けての課題は見えている。=敬称略=(編集委員)

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2020年10月14日のニュース