カウボーイ大谷、絆の“西部劇” 大好きな兄貴分スカッグス投手の発案に“全力投球”

[ 2019年7月30日 08:30 ]

Monthly Shohei

母校・サンタモニカ高校のすぐそばに描かれたスカッグス投手の壁画(撮影・奥田 秀樹通信員)
Photo By スポニチ

 エンゼルス・大谷翔平投手(25)の頼れる兄貴分だったタイラー・スカッグス投手(享年27)が今月1日に急逝し、約1カ月が経過した。スカッグス投手は亡くなる直前、テキサス遠征時に「カウボーイスタイル」での移動を企画。大谷は自ら専門店に足を運び、ブーツやハットを購入して準備していた。2人の最後の絆に迫った。(取材構成・奥田秀樹通信員)

 その場にいる誰もが驚いた。6月29日の午後2時すぎ。大谷が水原通訳とともに、エンゼルスタジアムから約5キロの距離にあるウエスタンウエアの専門店「BOOT BARN(ブート・バーン)」に姿を現した。

 接客したアシスタントストアマネジャーのテイラー・シモンズさんは「びっくりした。選手で自分で足を運んだのは彼だけ。他のお客さんも“OH MY GOD!”とはしゃいでいました」と仰天。「ナイターの試合前で忙しいのに私の説明を聞きながら、30分くらいかけてカウボーイハットとブーツとシャツとスエード革の黒いベストを購入していきました」と興奮気味に振り返った。

 翌30日のテキサス遠征のドレスコードはカウボーイスタイル。スカッグス投手が発案した「WESTERN WEAR GET AWAY DAY」という企画だった。のちに大谷は「やれと言われたのでやるだけな感じです」と照れていたが投手陣のリーダー、そして代理人事務所の先輩でもある兄貴分の発案に全力で応えた。律義で、義理堅い大谷らしい行動でもあった。

 西部劇の舞台に出てくるような19世紀の古典的なウエスタン・ファッション。米国人でも全員が知識があるわけではない。大谷はどう購入すればいいか、説明に熱心に耳を傾けていたという。「まずはブーツから決めます。最も高額ですし、色、革の種類、細部のデザインなども異なります。うちには400種類以上のストックがあります」とシモンズさん。大谷が選んだのは子牛の革の黒だった。

 「ブランドは“エル・ドラド”で伝統的で快適なブーツ。大谷選手はすでに(自前で)良いジーンズをはいていたから、あとはブーツにマッチする黒のベストと黒のハットを選べばよかった」とシモンズさん。シャツはカントリー音楽のスター、ブラッド・ペイズリーのオリジナルブランド「ムーンシャイン・スピリット」。長い袖と2個1組のスナップボタンの典型的カウボーイスタイルだ。別の販売員のピーター・ニチキさんは「彼が自分で足を運び、自分の目で商品を見て、サイズが合うか試したのはとても正しいアイデア。おかげで全て完璧に見えた」と大絶賛するほど似合っていた。

 「ブート・バーン」は、全米33州に約250店舗を展開するチェーン店。大谷が訪れたオレンジ店は1号店で、創業40年を超える老舗だ。シモンズさんは「うちのスタッフは全員がエンゼルスの大ファン。だから今回の企画には興奮しましたし、選手が私たちの商品を身につけた写真を見た時も、感激しました。大谷選手が来てくれた日はエンゼルスに球場に招待してもらい、試合に行くこともできました」と言う。当日の先発はスカッグス投手。「その後、スカッグスが亡くなったのは残念だったけど、私にとっても思い出深い日になりました」としみじみ話した。

 大谷はスカッグス投手が大好きだった。だから照れながらも、ブーツで床を鳴らし、カウボーイハット姿で満面の笑みを見せた。兄貴分もきっと、うれしかったに違いない。

 ≪追悼ミサに900人≫試合のなかった22日には、スカッグス投手の出身地サンタモニカの教会で追悼ミサが執り行われた。親族や大谷らエ軍選手、スタッフ、職員ら900人が集まった。親友のヒーニーらがスピーチに立ち、涙ながらに、時に笑いも交えながら思い出話を語り、故人をしのんだ。また、母校サンタモニカ高の野球場近くにはエ軍のユニホーム姿でほほ笑むスカッグス投手の壁画が描かれた。本拠エンゼルスタジアム入り口には、死去後から多くの献花が絶えず続いている。

続きを表示

この記事のフォト

2019年7月30日のニュース