球史に“新たなドラマ”刻んだタイブレーク 選手も理解 疲労軽減に一定の効果

[ 2018年8月24日 11:00 ]

済美―星稜戦では逆転サヨナラ本塁の劇的な幕切れとなった
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 【メモリアル甲子園総括 100回目の夏を終えて(下)】日本高野連は選手の健康面を考慮し、今春センバツからタイブレーク制度を導入した。センバツは適用なし。今夏の甲子園では第2日の1回戦・佐久長聖―旭川大高が延長12回を終えて同点で、13回から史上初のタイブレークに突入。佐久長聖が5―4で制した。

 佐久長聖の藤原弘介監督が13回、継続打順のため、投手が走者に出る際に臨時代走の起用は可能かどうかを確認するなど、細部まで浸透していない部分はある。投手は最大15イニングまでの登板制限はあるが、決着がつくまで継続されることの可否も含め、今後の議論継続が必要である。

 導入時、危惧する声が上がったのが選手の気持ちだ。3年生は最後の夏。「人為的にピンチがつくられた中で負けたチームの心情を考えれば導入すべきでない」という現場指導者の声も多くあった。敗れた旭川大高のある選手は「少し複雑」と話したが、一方で試合後に「ルール内のこと」「相手も同じ条件」と納得もしていた。

 今年の酷暑を踏まえれば、選手の肉体的負担を最優先に考えなければいけなかった。積極的な水分補給を呼び掛けるなど対策をとったが、大会序盤は毎試合足をつる選手が出る日もあった。2度目のタイブレークとなった2回戦・済美―星稜は、済美・矢野が延長13回に史上初の逆転サヨナラ満塁弾を放って決着。劇的な幕切れの裏で、エース山口直はこの試合184球を投じて2戦連続完投しており、関係者は「引き分け翌日再試合となっていたら山口君の体はどうなっていたか」。本来のタイブレーク導入の意義が再確認された一戦とも言えた。

 日本高野連の竹中雅彦事務局長は「できればやりたくない。ただ新たなドラマが生まれたり、新たな一歩となった」と述べ、タイブレークを戦ったチームにはヒアリングし、今後の改良に役立てる方針を示した。(高校野球取材班)=終わり=

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