高校2年夏以来の苦闘…藤浪「歯を食いしばって」407日ぶり勝った

[ 2018年6月16日 05:30 ]

交流戦   阪神4―0楽天 ( 2018年6月15日    楽天生命パーク )

<楽・神>今季初勝利を挙げ、降りしきる雨の中、ファンの声援に応える藤浪(撮影・岩崎 哲也)
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 歯を食いしばって、もぎ取った復活星だ。阪神・藤浪晋太郎投手(24)が、15日の楽天戦に先発し6回1/3を4安打9奪三振無失点の快投で今季初勝利を手にした。昨年5月4日のヤクルト戦以来、実に407日ぶりとなる白星。制球難に陥り、長い2軍暮らしを経験するなど、キャリア最大の試練に立たされた若きエースは、苦闘の末に自力でトンネルを抜け出した。

 雨でぬかるむマウンドに、身を打つ寒風が、最後の試練だった。もう負けない――。右足で泥を跳ね上げ、躍動する背番号19。誰もが待っていた姿だ。

 「一番良い形でゲッツーになって良かった」と、3回1死満塁で島内を三ゴロ併殺打に仕留めるなど、走者を背負っても慌てる過去の姿はない。最速154キロの直球に、変化球の制球も乱れず、9奪三振の力投。「藤浪晋太郎」が帰ってきた。

 奥歯をかみしめ続けた日々だった。昨年5月4日ヤクルト戦以来、407日ぶりの白星。新人時代から投手陣の中心だった男が、この1年以上、大半を2軍で過ごした。苦悩した約400日間を今は無駄でないと思える。

 「人生で3回か4回は、歯を食いしばってやらないといけない時があると思うんです。その1回目は高校2年の夏だった。あの時も、一時期ストライクが入らなくなったりして…。入団してすぐに2桁も勝てましたけど、心の中ではずっと、そんなに甘くないと思っていた。(苦闘が)すごく長くはなってますけど、今が自分のまた、踏ん張らないといけないところだと」

 高2夏の大阪大会決勝、東大阪大柏原戦で7回途中5失点で降板し、サヨナラ負けで甲子園を逃した。1週間以上立ち直れなかった17歳の夏から7年。再び訪れた野球人生の岐路で「結果が出なければ、このまま終わってしまう世界。でも、絶対に見返す」と再び、歯を食いしばった。

 昨年から顕著に表れ始めた制球難。ずっと相棒だった白球を制御できず「リリースの感覚が無い…」と漏らした。結果が伴わなけれれば、当然、雑音も耳に入ってきた。

 「自分はイップスなのかなと思った時もあります。それでも、いろんな人に、話を聞いて、いろんな場所に行って、それは違うとなった。技術的に確かなものを確立することが大事だと思えた」

 4月下旬に2軍降格後、欠かさず取り組んだのが、福原投手コーチを相手にした18・44メートルでのキャッチボール。「70%の力で変化球も投げて、フォームを固めた」。基本に立ち返り光を見いだした。

 「(7回を)しっかり投げないとという気持ちが強い。次しっかり粘れるように頑張りたい」。視線は「次」へと向けられた。復活は終着点でない。藤浪晋太郎が走り出した。(遠藤 礼)

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