DeNA 伝統の逆転劇は今季も健在

[ 2017年5月8日 09:30 ]

6日のヤクルト戦の延長11回1死二塁、サヨナラ打を放ち石川から手荒い祝福を受けるDeNAの柴田
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 【宮入徹の記録の風景】ゴールデンウイーク終盤の5月6日、プロ野球は大荒れだった。阪神が広島戦で0―9から12―9と逆転で勝てば、DeNAもヤクルト戦で0―5から梶谷の満塁本塁打で追いつき、延長11回6―5でサヨナラ勝利を収めた。5点差以上の逆転試合は昨年でもセ・パ各3度の計6度だけ。1日で2試合も大差の逆転試合が生まれた。

 2リーグに分立した50年以降、現12球団の5点差以上の逆転勝利回数を調べてみた。多い順に並べると(カッコ内は50年以降の通算チーム勝率と同順位)

 1位DeNA60(・444(12))

 2位中日54(・524(4))

 3位オリックス51(・512(5))

 4位ソフトバンク49(・531(2))

 4位日本ハム49(・483(8))

 6位西武44(・529(3))

 7位ロッテ43(・503(7))

 8位広島42(・479(9))

 9位阪神41(・504(6))

 10位巨人31(・576(1))

 11位ヤクルト29(・468(10))

 12位楽天12(・456(11))

 意外にも期間中の勝率が最も低いDeNA(前身球団を含む)が最多の60度。他球団を引き離し、お家芸にしている。対照的に勝率1位の巨人はDeNAのほぼ半数の31度で10位。勝率の高さと大逆転の多いチームは比例するわけではないようだ。

 こうした珍現象の背景にあるのが投手力の差。巨人の場合、シーズンのチーム防御率1位が最多の27度。一方、DeNAは防御率最下位が最多の26度もある。5点差以上の逆転勝利を収めるには味方投手陣が5点以上奪われていることが条件になる。投手力が充実していれば、いくら打撃陣が強力でも大量失点をはね返す展開にはなりにくい。

 そのDeNAだが、前身球団である横浜時代の98年に「マシンガン打線」を軸に日本一を達成した。同年の前後1年を加えた3年間は、まるでお祭り騒ぎのような逆転劇が頻出した。5点差以上の逆転試合は97年3度、98年2度、99年4度と計9度を数えた。中でも98年7月15日の巨人戦(横浜)は壮絶な打撃戦として忘れ難い。横浜は0―7の劣勢からじりじり追い上げ、9回波留のサヨナラ安打が出て13―12で巨人を振り切った。余談になるが、この乱打戦の最中、普段は冷静な巨人の松井と高橋由がともに本塁打した際、ガッツポーズをしながら一塁ベースを回った。激しい打ち合いで、さすがに感情を抑えきれなかったのだろう。

 ところで、プロ野球最大の逆転劇は10点差をはね返したもので3度記録されている。最初は1リーグ時代の49年10月2日に大陽が大映戦で0―10から11―10と逆転。2度目は51年5月19日に松竹が大洋戦で2―12から13―12。3度目は97年8月24日に近鉄がロッテ戦で0―10から11―10と逆転サヨナラで勝った。この試合、クラークの中越え安打で投手ながら代走で出場した入来が決勝のホームを踏んでいる。近鉄は04年にチームの歴史を閉じたが、その年まで5点差以上の逆転勝利は44度。当時のパ・リーグではオリックスと並び最も多かった。10点差逆転は「いてまえ打線」の真骨頂を示す試合でもあった。 (専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、1回目の91年から26回連続で資料説明役として出席。

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