早実・清宮 存在感勝ち 1点差9回2死一塁、ネクストで“にらみ”

[ 2017年3月25日 05:30 ]

第89回センバツ高校野球・第5日 ( 2017年3月23日    甲子園 )

<明徳義塾・早実>9回2死一塁、ネクストバッターズサークルで打席を待つ清宮
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 「清宮の重圧」が奇跡を起こした。1回戦3試合が行われ、早実(東京)は明徳義塾(高知)に延長10回の末、5―4で逆転勝ちした。1点差とした9回2死一塁、清宮幸太郎内野手(3年)が次打者で控えた場面で相手投手が失策。打席が巡ってきた清宮は四球を選んで同点劇につなげた。高校通算79本塁打を誇るプロ注目のスラッガー。4打数1安打ながら強烈な存在感を示し、初戦突破を果たした。

 1球ごとに甲子園のどよめきが大きくなる。2点差の9回に1点を返し、なおも2死一塁。清宮はネクストバッターズサークルにいた。バットを肩に担いで悠然と待った。フルカウント。横山の放ったゴロを、明徳義塾のエース北本がはじく。後方へ転がったボールを拾おうとしたが、手につかずに一塁に投げられない。投ゴロで試合終了…。そうならないことを主砲は信じていた。

 清宮 やっぱり来たなと。これは勝ったなと思った。

 北本 清宮の応援が凄くて雰囲気にのまれた。焦って捕り損ねた。

 清宮がもたらした重圧。絶体絶命のピンチはチャンスに変わる。主砲は四球を選び、4番の野村も押し出し四球で同点に追いついた。そして延長10回に野田が決勝の中前適時打を放ち、逆転勝ちした。試合後、清宮は「心臓に悪い試合」と苦笑いしつつ「球場の雰囲気を一変させるのが自分たちの持ち味。あの(9回の)どよめきは凄い楽しかった」と言った。和泉実監督、敵将の馬淵史郎監督もこう振り返る。

 和泉監督 次が清宮だったし、(失策は)見えない重圧があったのでは。

 馬淵監督 投ゴロで終わったと思った。早実には野球の神様がついとる。

 昨秋の東京大会決勝・日大三戦の経験が生きた。清宮が5三振しながら、2点を追う9回に4点を奪って逆転サヨナラ勝ち。甲子園でも逆境に強い早実の底力を示した主将は「おじけづくやつは一人もいなかった」と胸を張る。4年前、早実中時代にアルプス席で観戦した試合とも重なった。センバツ2回戦の早実―龍谷大平安戦。早実は6回まで無安打で0―2と劣勢だったが、7回に4点を奪って逆転勝ちした。「負けムードであれだけ打っていなかったのにと思った」。“魔物が棲む”と言われる甲子園では何が起こるか分からない。一つのプレーをきっかけに、球場の空気が一変することを高校に入る前から体感していた。

 初回の最初の打席では中前打を放った。3回に中堅、8回には左翼へ大飛球を放ったが「打ち損じた」と悔しがり、王手をかけている節目の80号はお預けとなった。それでも1年夏以来の甲子園で挙げた「主将1勝」。校歌を歌い終え「気持ちよかったですね」と満面の笑みだ。ミラクル劇を「存在感」で後押しした17歳。今度は豪快な一発で甲子園をどよめかせる。 (東尾 洋樹)

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2017年3月25日のニュース