小久保監督が大切にする「心」 ハム中田に「侍Jではつばを吐かないでくれ」

[ 2016年12月23日 10:30 ]

 侍ジャパンが、来年3月のWBCに出場するメンバーの28人のうち18人を20日に“先行”発表した。翌日には、日本人大リーガーの青木(アストロズ)も追加メンバーとして発表された。

 小久保監督は常々「選ぼうと思っている選手にはなるべく早く伝えてあげたい。WBCに向けて準備をしている選手の心を大切にしたい」と話してきた。代表選手としての「心」。小久保監督が就任して3年半。選手に伝えてきた部分である。

 11月の強化試合、都内ホテルで行われたミーティングでは、中田(日本ハム)の名前を挙げてこう説いたという。「侍に来たときは(グラウンドに)つばを吐かないでくれ」。シーズンの戦いの中、テレビ中継を見ている時にその光景を目にしたと聞く。でも、これは今回だけでなく「毎回、代表を招集した時に話をしていること」とした。

 指揮官は「グラウンドは道場」と話す。現役時代、武道家の先生に「なんで野球選手はグラウンドでつばを吐くんですか?野球選手の道場はグラウンド(球場)ではないんですか?」と聞かれて、ハッとしたという。確かに、畳の上でつばを吐く武道家はいない。

 ノックバットも用意されているが、試合前の打撃練習では決して杖代わりにして打撃ケージ裏に立つこともない。背筋を伸ばし、練習を見守る。テレビ中継の解説でグラウンドを訪れても、同じだ。ホームとビジターの練習の約3時間、立ち続ける集中力は現役時代から養われたものだ。

 ダイエー(現ソフトバンク)に入団し、プロ2年目の95年、24歳で本塁打王になった時に、当時の王貞治監督から「手本になれ」と言われた。今は常設化された侍ジャパンの選手が、チームに帰った時に模範となるべきだと考えている。野球界の発展につながるとの信念もあるのだろう。

 今回の選考に関しても、必死に準備している選手の「心」を大切にし、年内発表をした。日本人メジャーリーガーの判断が出そろうまで待っていたら、来年1月中旬から下旬の一斉発表だった。

 来年2月23日からの宮崎直前合宿には出場メンバー28人ちょうどで臨む方針も示している。「コンディションの良いものを選ぶ」のではなく「代表選手として必ずコンディションを上げてくれ」とのメッセージでもある。代表の「誇り」という目に見えない部分は、選手に浸透しているはずだ。(記者コラム・倉橋 憲史)

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2016年12月23日のニュース