21世紀枠候補の富岡 世界遺産登録に続け 製糸場の次は野球で沸かせる

[ 2014年12月13日 05:30 ]

加藤校長(左端)からセンバツ21世紀枠選出を聞く富岡ナイン

 日本高野連は12日、第87回選抜高校野球大会(来年3月21日から12日間・甲子園)の21世紀枠候補校9校を発表し、関東からは今年6月に世界遺産登録された富岡製糸場に近く、今秋群馬県大会4強に進出した富岡が選ばれた。選出されれば、春夏通じて初出場となる。出場3校は一般選考の29校(神宮大会枠を含む)とともに来年1月23日の選考委員会で決まる。9校から東(東海、北信越以東)と西(近畿以西)で1校ずつを、残り7校から地域を限定せずに最後の1校を選ぶ。

 製糸場の町から、悲願の甲子園出場へ前進した。今年6月、世界遺産に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」から約1キロにある創立117年の伝統校。練習中に吉報を聞いた富岡ナインは笑顔を見せ、中野光士監督は「ひと冬しっかり気を引き締めて練習していこう」とハッパを掛けた。

 人口減少と少子高齢化が深刻な町に再びの朗報だ。富岡市の人口は約5万1000人。20年後には3万人台にまで減少すると試算され、同高も1学年5クラスから来年は4クラスに減ることが決まっている。そんな中、製糸場の世界遺産登録で地域は一気に活気づいた。富岡の野球部員も場内ツアー参加を観光客に呼びかけるボランティア活動に携わり、年間来場者数は昨年の約30万人から、あと3週間近くを残し、すでに100万人を突破した。伊原主将は「小学校の時に何度も見学に行った場所。県外の方もたくさん来て、町がにぎわっているのが分かった。今度は野球で盛り上げる」と意気込んだ。

 文武両道も高く評価された。毎年国公立大合格者を輩出する進学校。ナインは午前7時から「朝勉強」を実施。合間を縫って学校周辺の清掃活動を行う。練習時間2時間の日もあるが効率重視で取り組み、今秋群馬県大会準決勝では今夏の甲子園でも8強入りした強豪・高崎健康福祉大高崎と互角に勝負するなど善戦した。エース竹井は「甲子園に出て富岡高校もアピールしたい」。世界遺産に続き、春夏通じて初の甲子園切符も糸のようにたぐり寄せる。

 ▼富岡市・岩井賢太郎市長 富岡製糸場の世界文化遺産登録で全国から注目されている中、地元・富岡高校野球部が21世紀枠関東代表に選ばれてうれしく思います。最後まで気を引き締めて、誇れる故郷「富岡市」から甲子園出場の夢をぜひかなえてほしい。

 ▽富岡製糸場 日本の近代化を進める明治政府が1872年(明5)に群馬県富岡市に設立した製糸場。全国の「模範工場」として、日本の最大の輸出品だった生糸を大量生産した。1987年(昭62)に操業停止。場内の建物は富岡市に寄贈された。

 ▽21世紀枠 2001年の第73回大会で初めて導入された。原則的に秋季都道府県大会のベスト16から候補校を選ぶ。困難な条件の克服など、戦力以外の特色を加味して地区ごとに1校が推薦され、第79回大会まで2校、第80回大会からは3校、第85回大会は4校が選出された。

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