松井 巨人でかなえる監督の夢 帰国後に渡辺会長訪問へ

[ 2012年12月29日 06:00 ]

両目に涙をためて引退会見をする松井

松井秀喜引退

 ゴジラの「第2章」が始まる。今年8月にレイズを自由契約となった松井秀喜外野手(38)が27日(日本時間28日)、ニューヨーク市内のホテルで引退会見を行った。今後は白紙としながらも、将来的に監督就任の夢があることを示唆。その際には、古巣の巨人の監督となることが確実視される。「ミスタープロ野球」長嶋茂雄終身名誉監督(76)に育てられ、日米通算507本塁打を記録した希代のスラッガー。今度は監督として次代のスターを生み出す。

 45分間に及んだ引退会見は松井が愛したニューヨークのホテルで行われた。少しふっくらした顔つき。目は終始、潤んでいた。日本で10年、米国で10年。計20年のプロ生活を終える感慨、寂しさ、安どが、代わる代わる浮かび上がった。

 しかし、今後、指導者を務める可能性について質問が飛んだ時。その目は真剣さを増した。

 「現時点では、そういう想像は正直していません。ただ、もしかして将来、そういう縁があるかもしれない」。言葉を選び、現在は白紙と強調。それでも、自身の経験をファンや選手に「いい形で伝えていければいい」という強い思いがある。

 プロ入り後、松井は2人の監督から大きな影響を受けた。巨人時代の長嶋茂雄氏とヤンキース時代のジョー・トーリ氏(現大リーグ機構副会長)。特に、長嶋氏については最も印象に残る時間を「2人で素振りした時間が、僕にとって一番印象に残っているかもしれない」と語った。どんな試合でも、本塁打でもない。尊敬する監督との練習が脳裏に刻まれていた。

 かつて親しい知人に「プロ野球選手で、監督の仕事に興味を持たない人はいない」と語ったことがある。温厚そうに見えて、根っからの負けず嫌い。野球への真摯(しんし)な取り組み、人望の厚さなど、指導者として多くの適正条件を備えている。期待通りの結果を残せなかったエンゼルス、アスレチックス、レイズ時代についても「僕の人生にとっては非常に大きな意味のあること」と経験値の足しにした。

 監督・松井秀喜。それは巨人しかない。今でも「相思相愛」の関係にあり、松井は会見で巨人を「ふるさと」と呼び、変わらぬ愛着をあらためて口にした。巨人も、日本復帰の際には獲得に動く方針を決め、70人の支配下登録枠も松井のために一つ空け、来年2月まで待つ姿勢を見せていた。

 今後について、松井は「自分なりにいろいろなことを勉強しながら、自分が経験したものを、いい形で(伝える)土台を作る」と語り、当面は充電期間に入る。早ければ年明けにも帰国。その際には引退の経過説明や今後の意見交換のため、渡辺恒雄球団会長(86)の元を訪れる予定だ。

 02年11月1日。松井は大リーグ移籍を表明する会見で「命を懸けてやる」と決意を語った。日本最高のスラッガーとして戦い続けた10年間。この日の会見では「命懸けのプレーも一つの終わりを迎えた」と言った。38歳でユニホームを脱ぐ決断を下したことに後悔はない。ただ、自身に掛ける言葉を聞かれると「もう少しいい選手になれたかも」と本音が口をついた。その思いは、指導者として「ゴジラ2世」を育てることにつながる。松井の夢には続きがある。

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2012年12月29日のニュース