島袋198球完投!興南初優勝!!

[ 2010年4月4日 06:00 ]

<日大三・興南>初優勝を決めて山川(手前)と抱き合う興南・島袋

 【興南10-5日大三】第82回選抜高校野球大会は3日、兵庫県西宮市の甲子園球場で今大会最多の4万3千人を集めて決勝を行い、興南(沖縄)が延長12回、10―5で日大三(東京)を下し、春夏通じて初優勝を果たした。大会No・1左腕、島袋洋奨投手(3年)が8安打5失点ながら198球の熱投で完投。昨年は春夏ともに好投しながら1回戦で姿を消した悲運のエースが3度目の聖地で頂点に立った。沖縄県勢の優勝は08年の沖縄尚学以来2年ぶり3度目となった。

【試合結果


 気力で左腕を振り続けた。5点を勝ち越した後の延長12回2死二塁。日大三最後の打者・吉沢の力ない飛球が左翼・安慶名(あげな)のグラブに収まる。連投の島袋が投じた198球目だった。

 「疲れは感じていない。成長した姿を見せたのが甲子園だと思う」。マウンドで白い歯をこぼしたエースの細い体は、歓喜で押し寄せるナインの輪にあっという間にのみ込まれた。観客席からは初優勝を称える指笛が鳴りやまなかった。

 準決勝まで491球を投げてきた疲労と決勝の重圧。序盤は変化球が浮き、2回は制球力抜群の左腕が珍しく3四死球を与え、自らのけん制悪送球など無安打で2点を失った。さらに3回と6回には直球を打たれ「練習試合でも記憶にない」という1試合2被弾。だが、そこからが大会No・1左腕の見せ場だった。

 上体を目いっぱいねじるトルネード投法からの速球で押しまくる。延長に突入すると、球速はさらに増し、10回には今大会最速の143キロをマーク。「気持ちよく投げていた」と7回以降は強打の日大三打線をわずか1安打に封じた。打撃でも12回に試合を決定づける2点二塁打を放つなど4打点を叩き出した。

 「去年までどうやったら勝てるのかと思っていた」。2年生エースだった昨年の春夏は、いずれも1回戦で敗れた。春は延長10回で19三振を奪いながら0―2で、夏は今宮(ソフトバンク)擁する明豊に3―4でサヨナラ負け。島袋はその試合のビデオを、捕手の山川とともに何度も見直した。課題は内角への攻め、組み立て、スタミナ。それらを克服し、甲子園で最高の結果を出した島袋は「あの2試合がなかったら、きょうの勝ちはなかった」と胸を張った。

 1960年に沖縄勢で那覇が初めてセンバツに出場してから節目の50年。今大会は嘉手納と2校が初めて同時出場しただけに、我喜屋(がきや)監督は「このチームで、優勝の2文字以外は許されないと思っていた。ベンチ、お客さん、沖縄みんなの総合力だと思う」と語った。目指すのは興南にとって初の春1勝ではなく、最初から日本一だった。握手を求めた指揮官に、島袋は澄んだ目で「甲子園は、最高の場所になりました」と答えた。悲運のエースが沖縄の英雄になった瞬間だった。

 ≪島袋の両親も感無量≫三塁側アルプススタンドから島袋に声援を送った両親も感無量の様子だった。父・直司さん(49)は「家では本当に普通の息子なんですが、ここではそう見えないんですよ」と感激。「大阪に行く前に握手をして送り出したんです」という母・美由紀さん(47)は試合後、アルプススタンド前にあいさつに来た息子を頼もしそうに見つめていた。

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2010年4月4日のニュース