さすがマー君!また完投でノムさん救った

[ 2009年10月24日 06:00 ]

<日・楽>完投勝利の田中将大は、ヒーローインタビューを終えスタンドのファンに向かってガッツポーズ

 【楽天3―2日本ハム】神の子マー君が望みをつないだ。楽天は23日、先発の田中将大投手(20)が日本ハムを6安打2失点に抑えて完投勝ち。チームは第2ステージ初勝利を挙げ、対戦成績を1勝3敗とした。田中はクライマックスシリーズ(CS)で2試合連続の完投勝利。負ければCS敗退が決まり、野村克也監督(74)のラスト采配となる一戦で、若き右腕が意地を見せた。

 誇らしさは、拳に込めた。一塁ベンチの前で右翼席へ突き上げた右拳。田中コールに応えて、今度は両腕を力いっぱい突き上げた。崖っ縁で踏みとどまった神の子、野球の子、田中様…。21世紀の“怪腕”は人懐っこい笑顔を咲かせた。
 「自分が雰囲気を変えられたらと思っていた。いい試合をしながら連敗で崖っ縁だったし、自分の投球で勝利に結びつけて、いいリズムで戦えるようにしたかった」
 鬼の形相に変わったのは8回だった。1点差とされ、なおも2死三塁。稲葉には四球を与えたが、1―1から最速153キロを含む150キロ超えを4連発。2死一、三塁からは先制ソロを浴びた高橋を150キロで追い込み最後は外角低めのスライダーで空振り三振に仕留めた。「ここを抑えれば勝てると思った。(力を)温存はしていなかった。振り絞りました」。あふれんばかりの気迫でピンチをしのいだ。
 後のない状況で2つのコントロールを駆使した。1つは文字通り、ボールの制球。2回、高橋にストライクを取りに行った初球の直球を右翼席に運ばれたが、それ以外は7回までの21アウト中13が内野ゴロ。細心の注意を払った制球力で低めにボールを集めた。
 もう1つは気持ちのコントロール。「負ければ決まってしまうという緊張でいつもと違うプレッシャーがあった。1、2回は力んでしまった」。しかし、序盤は普段よりも穏やかな表情を浮かべていた。相手に心を悟られないポーカーフェースでアウトを重ねた。エースとは。勝つ投球とは。最後まで1人で投げきった魂の126球には3年間、野村監督から叩き込まれた教えが随所に詰まっていた。
 試合前、野村監督は「稲尾2世だから、やってくれるんじゃない。稲尾様~」と田中を往年の名投手、稲尾和久にたとえた。1958年の日本シリーズで巨人に対し3連敗から4連投して日本一を奪った「神様、仏様、稲尾様」の怪腕。王手をかけられた一戦でCSで2戦連続完投勝ちに「マー君よう頑張った。何も言うことなし」。指揮官は愛弟子にかつてのライバルの姿を重ねた。
 ただ、あすなき戦いに変わりはない。田中は4戦目以降は救援での連投も辞さない覚悟だ。「まだチャンスはある。ベンチで待機していつでも投げられるようにしたい」。田中がつないだ夢を、まだ消すわけにはいかない。

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2009年10月24日のニュース