山県 リオ代表へ完全復活!3年ぶりに桐生に勝った
陸上セイコー・ゴールデングランプリ川崎
(5月8日 川崎市等々力陸上競技場)
短距離のエースは俺だ。男子100メートルで12年ロンドン五輪代表の山県亮太(23=セイコーホールディングス)が、向かい風0・4メートルの中、10秒21で2位に入った。10秒02で制した04年アテネ五輪金メダリストのジャスティン・ガトリン(34=米国)には敗れたものの、10秒27で4位の桐生祥秀(20=東洋大)に13年6月の日本選手権以来、約3年ぶりに先着し、日本初の9秒台突入にも自信を深めた。サニブラウン・ハキーム(17=城西高)は10秒34で5位だった。
描いていた青写真が一瞬で消える。山県は号砲直後、バランスを崩した。「コケました。最初でガトリンに並ぶか先行できると思っていたのに」。1つ左のレーンを走るアテネ五輪王者にはリードを許したが、中盤からスムーズに加速。もう1つ左のレーンの桐生をとらえてフィニッシュだ。所属のセイコーが冠スポンサーの今大会。タイムは10秒21にとどまったが、昨年は欠場した23歳が存在感を示した。
「初めて仕事ができたかな。中盤から後半に桐生が見えて、負けたくないと思った。(スタートを)引きずることなくいけた」
12年ロンドン五輪で準決勝に進出。13年日本選手権で桐生を破って優勝したが、同年の世界選手権で左太腿裏肉離れを発症し、14年以降は腰痛に苦しんだ。今季は体調に不安はないが、ここ数年の不振でメンタルに不安を抱える。4月の織田記念国際を制しても、自身を疑っていた。「フロックかもしれない」。ガトリン、桐生、サニブラウンと争った今大会。ロンドン以来という緊張感の中で好走し、「自信になった」と笑った。
完璧主義者だった自分は、もういない。以前の山県は練習で足を置く位置にも極度のこだわりを持ち、「うまくいかないと気に食わなくてイライラしていた」と言う。当時より筋力トレの負荷を上げた今、疲労が残る中で走る機会が増えた。「気にしていたら、練習にならないんで」。自分のイメージと異なることも受け入れる。だから、この日もスタートのミスを取り返すことができた。
まだリオデジャネイロ五輪の参加標準記録(10秒16)を突破していないが、はるかに上の次元を見据えている。「自己ベスト(10秒07)の更新も狙えるし、10秒06も9秒台も差はないと思う。9秒台の手応えは、昔よりも確実に持っている」。東日本実業団選手権(21、22日、埼玉)から日本選手権(6月24~26日、愛知)へ。完全復活した山県が、さらに加速する。
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