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侍・為末も驚いた!予選とは別人ゴール

[ 2008年6月28日 06:00 ]

男子400メートル障害決勝 49秒17で優勝し、五輪代表を決めた為末大(左)

 誰よりも本人が驚いていた。五輪代表選考を兼ねた陸上の日本選手権、男子四百メートル障害決勝、最後のハードルを越えてから最大のライバル・成迫を突き放し、為末大が真っ先にゴールに飛び込んだ。今季初めてA標準を突破する49秒17は、決勝進出の8人で最下位だった26日の予選から1秒70もタイムを短縮。3大会連続の五輪出場を決めた侍は、両手で顔を覆って背中から倒れ込んだ。

 「自分でもビックリしている。ここまで走れると思っていなかった。体調はきのう(26日)と変わっていなかった」
 思い出の7レーンで奇跡を起こした。2個目の銅メダルを獲得した、05年のヘルシンキ世界選手権。降りしきる雨の中、絶妙の先行策で海外の強豪を幻惑した。練習不足のため後半に転倒する危険もあったが、その時と同じように前半から突っ込んだ。「レース前に抑えきれなくなった」。為末が視界に入る3レーンの成迫に、無言のプレッシャーをかけ続けた。
 3月から両ふくらはぎ、左アキレス腱を続けて故障。回復が遅れて何度もあきらめかけたが、驚異的な勝負強さを見せつけて北京ロードを切り開いた。「ここで何か起きたら、北京でも何か起きると暗示をかけてきた。北京でも奇跡が起きれば」。00年シドニー五輪は予選落ち、04年アテネ五輪は準決勝敗退に終わった。悔しさを晴らす集大成の夢舞台。競技人生のすべてを込めたこん身の一太刀で、侍ハードラーが奇跡を起こす。

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2008年6月28日のニュース