“無敵”の吉田沙保里が負けた…
レスリングの女子国別団体戦ワールドカップ(W杯)は19日、中国・太原で第1日を行い、アテネ五輪女子55キロ級金メダリストの吉田沙保里(25=綜合警備保障)が、1次リーグの米国戦で伏兵マルシー・バンデュセンに0―2の判定で敗れる大波乱があった。01年12月から続いていた吉田の連勝は119でストップ。96年の国際大会デビュー以来114連勝中だった外国人選手に初黒星を喫し、絶対といわれた北京での五輪連覇に暗雲が立ちこめた。チームも3―4で敗れ、20日の3位決定戦に回った。
痛恨の黒星に女王が表情を失った。第1、2ピリオドとも攻めた技を返されて失点。微妙な判定の際に行われるビデオチェックの末に、2度とも相手にポイントが与えられ、ピリオドを連取された。他の階級を見ることもなく、吉田はマットサイドでうなだれた。チームの敗戦が決まると、涙が止まらなかった。
約50分後「勝てると軽くいってしまったのが悪いと思う」と涙を必死にこらえて答えた。相手バンデュセンは昨年の世界選手権10位。米国代表では唯一、五輪出場権も獲れなかった。だが「この技(返し技)を何千回も練習していました」と吉田の必殺技のタックルを返すことだけを狙っていたという。昨年、女子では史上初の5連覇を達成した際も、3回戦で返し技を食らい、新ルールで初めてピリオドを奪われた。今回はばん回することもできなかった。
強過ぎる日本に対し、微妙な技の際に外国選手に有利な判定が出ることがよくある。ビデオチェックになった時、全日本女子の栄和人監督は「まずい」と思ったという。しかし、それも試合。吉田は「返された技とはいえ、負けは負け。タックルで返されると、必ず相手に(ポイントが)入った。返された自分が悪いと思う」と言い訳はしなかった。
団体戦ルールで、体重が階級より2キロオーバーまで許される今大会は、日本に不利という声もあった。だが、減量がほとんどない吉田も、弁解はしなかった。「まだ北京がある。もっと練習しなければならないことが分かった。北京では絶対に優勝です」。最後まで涙声だった女王は、この屈辱からはいあがり、北京で五輪連覇を達成することをあらためて誓った。
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