【浜田剛史 我が道16】完全アウェー「ここが墓場になるのか」 控室に割れたビール瓶が散乱、試合中は…
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ここが、オレの墓場になるのか…。
試合をしながら、そう考えたのは、初めてでしたね。
1984年(昭59)3月1日、ロサンゼルスに遠征し、ホセ・レセンデス(メキシコ)と試合をしました。当時の中量級は、世界と東洋の差が大きいという状況だった。世界挑戦のために、海外で試合をしなければいけない。遠征の目的は、米国で自分の名前を売ることでした。
ただ、試合が決まりません。東洋のボクサーとやっても意味がないというわけです。2月予定の試合が、相手が逃げたりして4度も延期になりました。
やっと決まった試合のメインイベントは、元WBA世界ウエルター級王者の人気者、ホセ・ピピノ・クエバス(メキシコ)で、メキシコ系の約1万人観衆で超満員。控室には割れたビール瓶が散乱してる。延期、完全アウェー、控室。全て初めての経験でしたね。
対戦相手はメキシコの選手だから、オレが打つとブーイング、相手が手を出せば歓声。レフェリーもメキシコ系だったので、何かと注意されました。3回ぐらいですか、終了ゴングが鳴っても、相手もレフェリーも止めないから、聞き間違えと思って攻め続けたら、カンカンカンとゴングが連打されました。
そしたら、客がモノをどんどんリングに投げ込むんですよ。瓶とかがビュンビュン飛んでくるわけです。「この会場から生きて出ることはできんかもしらん」と思いました。
そして6回。相手のガードの下、下を狙っていた右ボディーが、急所の上あたりに入ったんですね。ローブローです。減点1と3分間の休養。会場は、さらに大変な状況になりました。それでも、命懸けで来てますから、萎縮はしなかった。
客の全部が敵、レフェリーも敵、会場からは生きて出られないかもしれない。ならば、KOしてやろうと。本場に行けば、浜田も倒せない、と言われるのも嫌でしたからね。
再開後、上にパンチを散らしつつ今度はしっかりボディーを決めた。試合中に両拳を痛めたので、攻撃をボディーに切り替えたんです。ダウンと思ったら、レフェリーはカウントを取らずに、怒り出した。またモノが飛んでくる。反則負けにされると思いましたね。
大混乱の中、米国人ジャッジが「浜田のKO勝ち」を主張し、結局、無効試合に。「おい浜田、来い!」と叫ぶ本田明彦会長に従って、人混みの中を控室に向かいました。「ここが墓場になるのか」。リングからの通路で襲われることも覚悟しましたが、何とか戻ることができた。
あの状況で生き残ったという感覚、経験は忘れられないですね。もう最後かもしらんという中で戦った経験は、得難い、大きな財産になりました。
◇浜田 剛史(はまだ・つよし)1960年(昭35)11月29日生まれ、沖縄県出身の65歳。沖縄水産高で高校総体王者。帝拳ジムからプロデビューし、84年12月に日本、85年7月に東洋太平洋のライト級王座を獲得。86年7月にレネ・アルレドンド(メキシコ)を衝撃的な初回KOで破り、WBC世界スーパーライト級王座を獲得した。戦績は24戦21勝19KO2敗1無効試合。現在は帝拳ジム代表。
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